「男はつらいよ」で想定外だった若者からの人気 山田洋次監督が語る「男はつらいよ」の世界

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山田洋次監督
『男はつらいよ』について「どちらかというと中高年世代に向けて作った」と山田洋次監督は語った(撮影:尾形文繁)
初公開から半世紀を経ても人気が衰えない映画『男はつらいよ』シリーズ。
俳優の渥美清さん(1928~1996)が演じた車寅次郎(寅さん)と妹のさくら、夫の博、寅さんの甥っ子満男、だんご屋「とらや」を切り盛りするおいちゃんとおばちゃん、裏の印刷工場のタコ社長など、柴又帝釈天の参道で繰り広げられる人情劇に現在も老若男女が惹きつけられている。

時代が変わっても人気が衰えない理由は何か。観客は、寅さんに何を見い出しているのか。原作者の山田洋次監督(91歳)のインタビューを3回に分けてお届けする。本記事は第1回(第2回第3回)。

――1969年にスタートした映画『男はつらいよ』シリーズは、地上波でもネット動画サイトでも視聴され続けています。人気が持続する理由は何だと思いますか。

さあ、どうしてだろうね。でも、中学生や高校生からよくお手紙をもらうんです。

『男はつらいよ』は、どちらかというと中高年世代に向けて作った映画だったんだけど、蓋をあけたら、若い人も中高年も観てくれている。ありがたいことです。

何事にもしばられない清々しさ

――若い人たちは『男はつらいよ』のどこに惹かれているのでしょう。

「解放された」とか「元気をもらった」という声が多いです。

寅には決まった価値観がないというか、あらゆる既成の価値観を無視しているというか、秩序や道徳観に一切しばられていない。ある意味めちゃくちゃで、身近にいる人にとっては、はた迷惑なんだけれど、観ていて清々しい。

そうした姿に今の若い人が惹きつけられるということは、彼らが息苦しさを感じながら生きているということではないでしょうか。

幼い頃から「こうあらねばならない」と言われ続けている。その最たる例が受験。こういう中学、高校、大学にいきなさい、落っこちたら大変、お先真っ暗だよと。子どもたちは相当なプレッシャーを受けているのではありませんか。

自由に生きられていないのは大人も同じです。道徳観や社会通念など、さまざまな既成の概念に日本人はしばられすぎていると思う。その点、寅はしばられていないから、相手が労働者だろうが総理大臣だろうが1人のおじさんとしか思っていない。

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