たとえば、インドは新興国・途上国の盟主としての地位を意識して、今年の1月12日と13日に、オンライン会合「グローバルサウスの声サミット」を開催して、120カ国以上を招待した。G20で議長国を務める立場から、「グローバルサウスの声を増幅させる」のがその意図である。
開催国のモディ首相はその演説の中で、「私たち『グローバルサウス』は、未来に関して最大の利害関係を有している。人類の4分の3が私たちの国に暮らしている」と述べた。モディ首相の言葉からは、新しい時代でインドが指導的な地位に立つための自負が感じられる。
そのような、「グローバルサウス」の影響力拡大を前に、G7諸国はそれとの関係拡大を摸索している。たとえば、岸田首相は1月13日のワシントンDCでの演説で、「グローバルサウスから背を向ければ我々が少数派となる。政策課題の解決はおぼつかなくなる」と述べた。
また、2月半ばのミュンヘン安保会議において、フランスのマクロン大統領は、「グローバルサウスからの信頼を失ったことを痛感している」とフランス、さらにはG7の影響力の低下に警鐘を鳴らした。日本の林外相が1月4日から、ブラジルなどの中南米4カ国を訪問したのは、明らかに「グローバルサウス」の協力を摸索するためのものであろう。
かつての植民地の記憶も
グローバルサウスの多くの諸国にとっては、経済成長を持続させることや国内政治体制の安定性こそが重要な課題となるはずだ。
さらにかつての植民地の記憶から欧米諸国との協力に否定的な感情も残っているのではないか。「法の支配による国際秩序」への支持や、ウクライナ支援のためにG7との協力を要請するうえで、グローバルサウスの諸国の広範で強力な支持が得られることを自明とすべきでない。むしろ、それらの諸国がそれぞれどのようなことを求めているのか、きめ細かに理解し、国際社会の多様性を認識し、そのために具体的に日本が貢献できるような努力が求められている。
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