日本の大人たちは「お金の本質」を知らなさすぎる お金について知るのは、世の中のことを知ること

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街を歩いていておなかが空いたので、あなたは飲食店に入り牛丼を食べて500円を払いました。これを小難しく説明してみると、その飲食店はあなたの抱える空腹という問題を解決し、その対価としてあなたは500円を支払ったということになります。

「問題の解決なんて大げさな!」と思うかもしれませんが、お金を払う・お金を得るというのは、一般的にこういうしくみになっています。「○○で困った」「□□をしたい」「△△が欲しい」、 そういった問題を解決してもらったときに、「助かりました、ありがとう」ということで、お金を払う。これが社会のルールなのです。そのことに気づくと、お金を払うことって大事なのだなと思えませんか?

もうひとつ、経済学的な見方で考えると、仕事をしてお金を得る人たちは「価値をつくり出して提供している」といえます。先ほどの飲食店の例でいうと、空腹を満たすためにあなたは牛丼に500円を払いました。何もつくらなければお金の受け渡しは発生しないのですから、飲食店は“牛丼=500円の価値”を世の中につくり出したということです。

価値をつくり出したのは飲食店だけではありません。牛を育てる人、お米を育てる人、それらを運ぶ人など、人がする仕事はすべて世の中に価値をつくり出しているのです。すべての価値あるモノ(商品・サービス)は、人が働くことで生み出されます。そして、それに「ありがとう」とお金を払う人がいる。これが経済活動です。あなたが払った500円は、その牛丼が提供されるまでに関わった人たちに分配されていると考えることができます。

これがお金を払うということ、お金を得るということの大原則です。普段なんとなく使っているお金も、その意味を考えてみると、世の中のことが少し見えてきますね。

買うのは“モノ”だけではない

「サービス」という言葉の意味を知っていますか? あまりにもふつうに使われている言葉なので、あらためて聞かれると戸惑う人もいるかもしれません。ここで確認しておきましょう。

たとえば、ゲームセンターで遊ぶときは、ゲームをするときの興奮や楽しみのために私たちはゲームの機械にお金を入れます。あるいは人気の映画を見に行くときも、その映画を見て面白がったり感動したりするために、チケット料金を払います。

さらに、もしケガをしたり、病気にかかったりしたら、病院に行きますね。そこでは治療費を払います。

こうしたものは、ジュースやハンバーガー、自動車やテレビといった形のある商品ではありませんが、満足感や安心、便利さといった目に見えないものを手に入れています。こうした形のないもの、所有することができないものがサービスです。サービスと商品の境界はあいまいで、お金を払うという点ではどちらも同じなので、サービスもまとめて「商品」と言ってしまうこともあります。

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池上 彰 ジャーナリスト

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いけがみ あきら / Akira Ikegami

1950年、長野県生まれ。1973年慶応義塾大学卒業後NHK入局。ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落事故など取材経験を重ね、後にキャスターも担当。1994~2005年「週刊こどもニュース」でお父さん役を務めた。2005年より、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在、東京科学大学特命教授。名城大学教授。2013年、第5回伊丹十三賞受賞。2016年、第64回菊池寛賞受賞(テレビ東京選挙特番チームと共同受賞)。著書に『伝える力』 (PHPビジネス新書)、『おとなの教養』(NHK出版新書)、『そうだったのか!現代史』(集英社文庫)、『世界を動かす巨人たち〈政治家編〉』(集英社新書)など。

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