日本の大人たちは「お金の本質」を知らなさすぎる お金について知るのは、世の中のことを知ること

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お金には大きく分けて3つの役割があります。

最初の役割は、誰でも知っていることです。お金でモノが買える、つまり、欲しいものと交換できることです。たとえば、のどが渇いたから自動販売機で100円のジュースを買う。おなかが空いたからファストフード店で300円のハンバーガーを買う。勉強のために書店で1500円の参考書を買う、などです。

次に、お金はモノの価値を金額で決めることができます。たとえばあなたがラーメン店に行き、お店のメニューを見たとしましょう。ラーメンが1杯500円で、チャーシュー麺が1杯800円だった場合、チャーシューがたくさんある分、ふつうのラーメンより300円分の価値が加わっているわけです。 お金はモノの価値をはかる「ものさし」 のようなものだと考えてよいでしょう。

お金の役割はもうひとつ。それは価値を保存できることです。お金は物々交換のときの肉や魚のように腐ることもなく、何年経っても100円は100円のままです。ですから、いざというときのために、すぐに使わない分はとっておく、つまり「貯金」をすることができるのです。

この3つの役割を知ると、お金のことがだんだんわかってくるようになります。

お金をもとに社会は動く

ここまでで「お金を払う・得るとはどういうことか」「お金の3つの役割」について説明してきました。お金についての基本的な知識ではありますが、知らなかったという人もいたのではないでしょうか。

でもそれは無理のないことだと思います。日本では、お金についての教育を学校であまりしませんし、大人の多くも実はお金のことをよく知りません。

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「お金は銀行に預けておけば安心」と親や祖父母から言われてきた人も多いのではないでしょうか? それは間違ってはいませんが、現在の日本では、お金を銀行に預けて貯めていたとしても、その利息はとても少ないです。

たとえば100万円を1年間銀行に預けても、利息は10円ほどにしかならないというデータがあります。このまま「銀行に預けておけば大丈夫」という言葉だけを信じていていいのでしょうか。

お金というのは人間がつくり出したもので、社会はお金をもとに動いています。お金について知ることは、世の中のことを知るということです。世の中のことというのは、政治や経済のことだけではありません。あなた自身の人生のことでもあります。

お金について知ることで、自分の人生をどのように生きていくか、あなたは深く考えられるようになります。しなくていい苦労を避けられることもあるでしょう。あなたにはぜひ、お金のリテラシー(知識、活用する能力)を高めてほしいと思います。

池上 彰 ジャーナリスト

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いけがみ あきら / Akira Ikegami

1950年、長野県生まれ。1973年慶応義塾大学卒業後NHK入局。ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落事故など取材経験を重ね、後にキャスターも担当。1994~2005年「週刊こどもニュース」でお父さん役を務めた。2005年より、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在、東京工業大学特命教授。名城大学教授。2013年、第5回伊丹十三賞受賞。2016年、第64回菊池寛賞受賞(テレビ東京選挙特番チームと共同受賞)。著書に『伝える力』 (PHPビジネス新書)、『おとなの教養』(NHK出版新書)、『そうだったのか!現代史』(集英社文庫)、『世界を動かす巨人たち〈政治家編〉』(集英社新書)など。

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