人気アナ次々退社「テレビ局から若手が消える訳」 アナウンサーよりインフルエンサーになりたい

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数年ほど前から、指導している就活生に「地方局のアナウンサーと東京の一般企業に両方内定したけれど、どちらに行くべきでしょうか」といった類の悩み相談を受けることが多くなってきた。

10年以上前だったら、アナウンサー志望の学生はテレビ局に内定をもらえたら地方だろうがどこでも行く――というのが当たり前だった。今後は、キー局のアナウンサーと一般企業で悩む例も出てくるかもしれない。

筆者のアドバイスは、これまでも、そしておそらくこれからも「まずはアナウンサーになろう」だ。

転職エージェントはしきりに転職市場における自分の市場価値を上げろと叫ぶ。転職市場において市場価値を上げるためには、人材としての希少性を高めることが必要だが、知名度を上げることはそこに直結する。何より、20代のいち会社員が退社すること自体がニュースになるような職業はアナウンサーをおいてほかにはないだろう。

今では一般会社員でもフォロワー数増加を目的にTwitterを“運用”する者も多い。希少価値の要素のひとつが、SNSのフォロワー数を含む知名度になってくる――という流れは止めることができないだろう。

であれば、今でも充分、20代の前半で知名度を上げること、さらにいえば“最初についた職業がアナウンサー”ということで希少価値をつけることは、個人のキャリア形成という意味では、踏めるなら踏んでおいたほうがいいステップである。

一般企業からアナウンサーへの転職は難しい

現実に、20代後半~30代前半で、前職がアナウンサーで、現在は転職をしてベンチャー企業の広報などで活躍している人物は多く存在する。筆者のもとに転職相談に来る時点では、アナウンサーの多くは「私はアナウンスメントしかできない」と、自身の市場価値を低めに見積もる傾向があるが、実際は手堅く転職できている。

このように、最初にアナウンサーになってから一般企業への転職ならいくらでもできるが、残念ながら逆はしづらいのが現状だ。だからこそ、今の時点でしか取れない手札を取ることを進めている。もちろん、そこに「一生居続ける覚悟で」というアドバイスを加えるわけではなく「まずは」を強調している。

自分が生まれた場所と、育つ場所は別であるということをいち早く悟って旅立っていく。続々と退社していく彼らは、テレビ局における“炭鉱のカナリヤ”なのかもしれない。

霜田 明寛 ライター/「チェリー」編集長

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しもだ あきひろ / Akihiro shimoda

1985年東京都出身。国立東京学芸大学附属高校を経て早稲田大学商学部卒業。9歳でSMAPに憧れ、18歳でジャニーズJr.オーディションを受けた「元祖ジャニヲタ男子」。3冊の就活・キャリア関連の本を執筆後、ジャニーズタレントの仕事術とジャニー喜多川氏の人材育成術をまとめた4作目の著書『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)がベストセラーに。また、文化系WEBマガジン「チェリー」編集長として監督・俳優などにインタビューする。SBSラジオ(静岡放送)『IPPO』の準レギュラーや、映画イベントの司会も務めるなど、幅広くドラマ・映画・演劇といったエンターテインメントを紹介している

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