「役所勤務はブラックか?」公務員の役得と犠牲 人気職業ながら批判も受ける公務員の実態
ちなみに、公務員の副業はすべてダメかというと、そうではありません。例えば、正式に許可を得れば、講演を行ったり、本を出版したりすることは可能です。職員によっては、その専門知識を活かし、他自治体で研修講師をしていることも、よくあるケースです。
さらに、兼業農家、僧侶、不動産賃貸経営なども認められることも、よく知られています。これらは、実家が農家、親からアパートを遺産として引き継いだ、などの事情があるからです。最近では、公務員の副業にも緩和の兆しがあります。障害者支援、部活動のコーチなどの地域の課題解決のためであれば、許可している事例もあります。
役所のブラックな一面
公務員でない人に「役所はブラック企業ですか?」と尋ねたら、「お役所は、9時5時の楽な仕事なんだから、ブラックなんてとんでもない!」と言われるかもしれません。しかし、公務員を30年以上経験した立場から言うと、必ずしもそうとは言い切れません。そこで、役所の勤務実態について、少し考察してみたいと思います。
地方公務員も長時間労働は確かにありますが、一年中という部署はないでしょう。人事異動前後の人事課、予算編成時期の財政課、選挙前の選挙管理委員会、住民税決定前の課税課のように、ある程度忙しくなる時期が決まっています。
ただし、突発的な事由により、急に残業ばかりになってしまう職場もあります。例えば、新型コロナウイルス感染症が流行りだした頃の保健所などは、その典型例です。しかし、こうした場合は、職員が増員されたり、応援体制が組まれたりします。
一方で、伝統的に残業をしている職場というのがあります。これは、職員数が不足しているというよりも、そのように仕事をするのが習慣になってしまっていて、帰りづらい職場になっていたりするのです。また、特定の職員に過重な負担がかかることがあります。それは、担当業務が「職員の不祥事に関する事務」のように、複数の職員で分担することが困難な内容であるような場合です。
今述べたような職場の場合、なかなか休暇を取得できないことがあります。時期によって取得しにくい、職場によって申請しづらいということはあるかもしれません。
しかし、役所全体で考えると、休暇を取得できないということは、まずないでしょう。なぜなら、人事課では「有給休暇の取得率」を調査しますので、取得しなければ、かえって注意されてしまうようなことがあるからです。
これは、あります。そもそも残業代の予算は、年度当初に決められています。このため、「残業したら、その分の手当がすべて支給される」ということはありません。職員としては、上限が決められていますので、その中で上手くやりくりするしかないのです。
このことは、日中は働かずに、あえて残業して残業代をもらおうという不心得者を排除するという面も確かにあるのですが、予算が不足していてサービス残業をせざるを得ないという現実がなくならないということでもあります。しかし、残業代が全く支給されないという職場は、まずないでしょう(本当に、全く残業しない職場があれば別ですが……)。
これは、意外にあります。「住民のためだから」と言いつつ、無理難題を押し付けてくることがあるのです。例えば、かつて保育園の待機児童が大きな問題となりました。
このため保育園の新設が市の重要課題となり、「住民のため、とにかく保育園を新設しなければ」という雰囲気になったのです。このため、長時間の残業を職員に強制したり、やや問題のある保育園運営事業者を参入させたりと、今考えると少し首をかしげるような事態もあったのです。ある意味では、職場全体が一種異様な雰囲気の中にのみ込まれていたのかもしれません。
以上のように見てくると、役所全体がブラック企業ということはありませんが、ブラックな一面があると言っても、間違いではないでしょう。これは多くの民間企業でも同様かもしれません。
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