ついに登場「山形新幹線E8系」完成までの全舞台裏 E6系ベースで開発、半導体不足で完成遅れる
時速300kmを実現するためE8系のノーズの長さは9mとなった。E3系の6mよりも長いが、E6系の13mよりも短い。
また、E8系の先頭車両の形状は「アローライン」と呼ばれるもので、JR東日本が2005年に開発した新幹線試験車両「FASTECH(ファステック)360」のノーズの形状である。アローラインはE5系やE6系で採用されている。E8系もこの系譜につらなる。
E8系はE6系と同じく7両1編成で、15編成が製造される。当初は17編成の予定だったが、コロナ禍による旅客需要の変動を踏まえ、15編成に変更された。製造を担うのは川崎重工業のグループ会社・川崎車両、そして日立製作所の2社だ。15編成を2026年春までに完成させる。それに伴い、すべての車両がE3系からE8系に置き換わる。
車両デザインは川崎車両が行った。E6系やE7系をデザインした奥山清行氏が監修者として細部のアドバイスをしている。E8系の配色はE3系「つばさ」を踏襲したもので、上部のカラーは「おしどりパープル」。車体色は「蔵王ビアンコ」という白色で、パープルと白の間に「紅花イエロー」という色が添えられている。
台車に着雪対策のヒーター搭載
先頭形状はなんとなく丸みを帯びていて、E5系やE6系のような複雑な形状ではなく、E2系のように自然に曲線を描いている印象があるが、「デザインでそう感じさせるようにしている部分もある」と、JR東日本鉄道事業本部モビリティ・サービス部門車両技術センターでユニットリーダーを務める白石仁史氏が話す。パープルと白の境目の部分はかなりエッジが立っているのだが、イエローのラインを引いたことであまり目立たないのだという。
もう1つ、先頭車両で工夫した点がある。E6系では先頭車両の乗客の出入り口が中間車両寄りにあったが、E8系では運転台寄りに変更したことだ。このほうが出入り口スペースを広く確保できるため火災など異常時における緊急脱出が容易なのだという。
「今回はE6系をベースに開発したので、E6系ほどの開発の苦労はなかった」と白石氏。しかし、「山形新幹線の新在直通という点で非常に気を使った」という。新幹線と在来線の安全をどう担保するか、そしてランニングコストをどうやって下げるかが開発のポイントだったという。
E8系の開発で最も苦労した点は何かという質問に対して、白石氏が挙げたのは雪対策である。秋田新幹線は在来線区間の盛岡の手前に温水を噴射して車体の雪を落とす装置が設置されている。しかし山形新幹線にはこうした装置がないため、E8系の台車部に着雪防止用のヒーターを搭載した。これによって積雪時における列車の遅れを減らすことができる。「今までよりは若干スムーズに運行できるのではないか」(白石氏)。また、カーブでの高速走行を可能にする車体傾斜装置がE6系に搭載されていたが、E8系には搭載されていない。E8系の速度なら搭載不要という判断だ。
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