ついに登場「山形新幹線E8系」完成までの全舞台裏 E6系ベースで開発、半導体不足で完成遅れる
JR東日本にまた1つ、新たな新幹線車両が登場した。形式名は「E8系」。山形新幹線向けの車両だ。2月24日、宮城県利府町のJR東日本新幹線総合車両センターで報道公開された。
山形新幹線は福島駅と山形県の新庄駅を結ぶ。東京―福島間は新幹線区間だが、福島―新庄間は在来線区間。つまりE8系は新幹線と在来線の両方を走るために開発された車両だ。山形新幹線の現在の主力であるE3系はまず1997年に同じく新在直通の秋田新幹線に投入され、その後1999年に山形新幹線に投入された。秋田新幹線は2014年までにすべての車両がE6系に置き換えられている。山形新幹線でも初期に投入された車両から更新時期が迫りつつあり、新型車両への置き換えが決まった。
E7系以来の新型新幹線
JR東日本の新型新幹線は2019年5月に新型試験車両「ALFA-X(アルファエックス)」が登場しているが、営業車両としては2014年のE7系以来となる。E8系の最初の編成は2024年春に運行を開始する。
開発のベースとなったのは秋田新幹線E6系である。E6系の営業最高速度は時速は320kmであり、E3系の同275kmと比べれば、格段に速い。しかし、高速走行できる新幹線区間が宇都宮―盛岡間425kmと長い秋田新幹線と違い、山形新幹線の場合は宇都宮―福島間の163kmしかない。つまり、山形新幹線の車両に時速320kmの性能があっても宝の持ち腐れになりかねないのだ。
一方で、E6系にはフロントノーズが長いという課題があった。列車が高速でトンネルに突入するとトンネル内に圧力波が発生し、トンネル出口周辺に大きな発破音や振動を発生させる。このため、フロントノーズを長くしたり形状を工夫したりすることで圧力波を極力抑える。つまり、E6系は時速320kmで走っても圧力波が強くならないようにフロントノーズを長くしているのだが、それゆえに先頭車両の座席数が少ない。新たに導入する車両の座席数がE3系よりもあまりにも少なくなると乗客の利便性を損ねてしまう。
新たに開発する車両はE3系よりも速度性能を高めたい。同時に、できるだけ多くの座席数を確保したい。そのため、スピードと座席数の両方を最適化できるよう、バランスをとって営業最高速度を時速300kmにするというコンセプトが決まった。
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