「ゴリエ・マツケン」人気再燃した"共通パターン" コスプレとダンス、自ら「演じる」文化が背景に

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マツケンとゴリエがブレークした2000年代中盤は、ダンスはまだ見るものという感覚が強かったと言える。アイドルの振付をコピーするくらいはあったが、ダンス文化はまだ一般に広まってはいなかったように思う。

しかし、いまやダンスは“見るもの”だけでなく“踊るもの”に変わりつつある。

SNS、とりわけTikTokなどにおいては、プロアマ問わず多くの人びとがダンス動画を投稿し、バズることも珍しくない。昨年日本レコード大賞を受賞したSEKAI NO OWARI「Habit」(2022年発売)のヒットも、ダンスがTikTokでバズったことが大きかった。

ダンスの流行はネット上だけではない。昨年から東京ディズニーリゾートで開催されているイベント「ジャンボリミッキー!レッツ・ダンス!」は、ミッキーマウスらディズニーのキャラクターと訪れた一般客が一緒になって踊るもの。

子ども向けのイベントではあるが、大人も一緒になって踊る姿が評判になった。昨年は『紅白』の特別企画にもなり、嵐の櫻井翔ら出演者も一緒に踊った光景は記憶に新しい。

こうしてダンスが“踊るもの”になった背景には、2012年から中学校の体育でダンスが必修化されたこともあるだろう。2024年パリ五輪の新種目に「ブレイキン(ブレイクダンス)」が採用されたこともダンス人口の増加にとって追い風に違いない。日本人は確実に「踊る国民」へと変貌しつつある。

「演じる」文化の新たな段階

マツケンとゴリエの復活の理由、それはこのようにコスプレ文化とダンス文化が浸透するなかで、その両方の楽しさを実感させてくれる存在だからではないだろうか。

もう少し大きい視点から言うと、両者の人気は日本人のなかで「演じる」文化が新たな段階に入ったということのように思える。

かつて1970年代くらいから普及したカラオケは、歌を鑑賞するものから自ら歌うものへと劇的に変えた。それと同じことが、違うかたちでいま起こりつつあるように見える。

カラオケもそうだが、コスプレなりダンスなり「演じる」ことは自分というものの窮屈な面から解放されることであり、一時ではあれ自由になることである。その喜びは、何物にも代えがたいものがあるのだろう。

太田 省一 社会学者、文筆家

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おおた しょういち / Shoichi Ota

東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得満期退学。テレビと戦後日本社会の関係が研究および著述のメインテーマ。現在は社会学およびメディア論の視点からテレビ番組の歴史、お笑い、アイドル、音楽番組、ドラマなどについて執筆活動を続ける。

著書に『刑事ドラマ名作講義』(星海社新書)、『「笑っていいとも!」とその時代』(集英社新書)、『攻めてるテレ東、愛されるテレ東』(東京大学出版会)、『水谷豊論』『平成テレビジョン・スタディーズ』(いずれも青土社)、『テレビ社会ニッポン』(せりか書房)、『中居正広という生き方』『木村拓哉という生き方』(いずれも青弓社)、『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)など。

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