「幸福な人」「不幸せな人」付き合っている人の違い 実は双方のグループが交わらないという事実

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そのネットワーク分析のなかで、たとえば喫煙といった、健康に悪い習慣が、友人関係を通して「うつる」ことがわかりました。同様に、幸せも「うつる」ことがわかったのです。具体的には、友人関係をネットワークとして図に表し、人間関係を線で結んでいき、幸福な人と不幸な人を色分けしていきます。

すると、5年、10年と時間が経過するにしたがって、幸福な人の色と不幸な人の色がほとんど交じり合わず、色分けされながら互いに増殖することがわかりました。幸福は、人間環境の産物なのです。

青年が現在の友人関係について、幸福と感じていないことは事実のようです。しかしこのままだと、上述の観点からしても、幸福から遠ざかってしまう可能性は高いでしょう。怖い話ですね、と青年は言います。「もちろんぼくだって、幸福をうつしてあげたいですよ」。にもかかわらず、青年は浮かない顔をしているのでした。

理由を聞くと、そこには彼なりの倫理とでもいえるものが見え隠れしていました。「話を聞いていろいろと考えていると、なんだか、自分がすごくイヤな奴に思えてしまって……」。どういうことでしょうか。

人生は、いいところ取りができない

青年は言います。「先生の話を聞いていて、僕も多様な友人付き合いをしてみたいと思いました。でもそれって、現在の友人とは会わなくなるということですよね。なんだか、損得で人を選別しているようで気が引けてしまうというか……。僕は好きだから友人と会うのです。その根っこは変えたくありません」。

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彼の言い分も理解はできるのですが、まず大前提として、人生はいいところ取りができません。ですから、多様な人たちと会えば、旧友と会う機会は必然的に減っていくことになります。しかし考え方を変えれば、その間に旧友に提供できるさまざまな話のタネをストックできる、大のチャンスということでもあります。

幸福学のメソッドは、実践することが最も大切なのです。ですから青年には思い切って、旧友と会う機会を少しの間だけでも減らしてみて、多様な人間関係づくりに励んでみてほしいと思います。そこで楽しい体験をするにせよ、ちょっとした失敗をするにせよ、以前のような愚痴のループよりはるかに幸福度の高いコミュニケーションが期待できることは間違いありません。

何より、現代という時代がそれを後押ししています。SNSの発展に伴い、今ほど多様なコミュニティーにあふれた時代はありません。幸福な人間関係のカギは至る所にあるのです。『幸福学の先生に、聞きづらいことぜんぶ聞く』では、そのために有効な「雑談」の重要性や、男女のコミュニケーション能力の違いなど、幸福な人間関係を広めていくためのメソッドを多数、紹介しています。

前野 隆司 慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科教授

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まえの たかし / Takashi Maeno

1984年東京工業大学工学部機械工学科卒業、1986年東京工業大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了、同年キヤノン株式会社入社、1993年博士(工学)学位取得(東京工業大学)、1995年慶應義塾大学理工学部専任講師、同助教授、同教授を経て、2008年より慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科教授。2011年4月よりSDM研究科委員長。この間、1990年-1992年カリフォルニア大学バークレー校Visiting Industrial Fellow、2001年ハーバード大学Visiting Professor。
 

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