「国共合作」で台湾の政権交代を狙う中国共産党 訪中した国民党代表を共産党が厚遇した理由

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中国・北京市で会談する台湾の最大野党、国民党の夏立言副主席(左)と中国の台湾政策担当トップの宋濤・国務院台湾事務弁公室主任(写真・時事、中国国民党提供)

中国は1年を切った台湾の次期総統選(2024年1月)に向け、中国国民党(国民党)と中国共産党の協力「国共合作」による台湾の政権交代に照準を絞り始めた。次期総統選では国民党にも十分勝機のある世論調査結果が相次ぐ。3期目入りした習近平指導部は、訪中した国民党幹部を中央と地方の台湾問題責任者に相次いで会談させて厚遇、政権交代の可能性や国共合作の具体策を話し合った。

中国側の前例のない厚遇

訪中したのは、国民党の夏立言副主席(副党首)らの代表団で、2023年2月8日から17日まで北京をはじめ中国各地を歴訪した。一行は同月9日、中国の台湾政策の実務上責任者に就任したばかりの宋濤(そう・とう)国務院台湾事務弁公室主任と会談したのをはじめ、10日には共産党序列4位の王滬寧(おう・こねい)政治局常務委員とも会談した。

一行はこの後北京、上海、重慶の各直轄市と江蘇、湖北、四川各省を回り、20回党大会で選出された地方トップと会談した。中国の各地方は、国民党色の強い台湾地方政府と農水産物の輸入などを通じ交流を深めている。

台湾外交部出身の夏氏は外交経験が長く、一行には馬英九政権(在任期間2008~2016年)のブレーンを務めた両岸関係専門家の趙春山氏も含まれる。夏氏は2022年8月10日にも訪中したが、アメリカのペロシ下院議長の台湾訪問後の大規模軍事演習の時期と重なったため、高官会談は実現せず、今回の中国側対応は「前例のない厚遇」になった。

まず序列4位の王氏との会談から振り返る。王氏は学者出身で江沢民、胡錦濤、習近平三代の下で、政治理念とイデオロギーを担当する「理論的支柱」とされてきた。2023年3月に開かれる全国人民代表大会では「全国政治協商会議」(政協会議)主席に就任する予定だ。

中国の国家機構の中で政協会議主席は、台湾統一問題が所管の1つ。国民党が発表したプレスリリースによると、夏氏が王氏に強調したのは、民主進歩党(民進党)の陳水扁政権(在任期間2000~2008年)下で両岸関係が緊張していた時期に国民党が果たした役割だった。

当時の連戦・国民党主席は、陳政権が第2期入りした直後の2005年4月に訪中、胡錦濤総書記との歴史的な「国共トップ会談」を行った。

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