「国共合作」で台湾の政権交代を狙う中国共産党 訪中した国民党代表を共産党が厚遇した理由

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今回「ダークホース」として浮上したのが、台北のベッドタウン「新北市」市長に再選された侯友宜氏。侯氏は「警察庁長官」に相当する職を経験した警察官僚で、地元では民進党支持層を含め圧倒的支持がある。警察官僚出身といえば、堅いイメージが付きまとうが、台湾ジャーナリストによると、「政治家と異なり実直でうそをつかない」のが、人気の理由と解説してくれた。

台湾総統選が米中代理戦にも

民進党系の「台湾民意基金会」が2023年2月21日に発表した最新世論調査では、選挙が賴清德、侯友宜、柯文哲による「三つ巴」の争いになった場合、32.4%の侯氏が、27.7%の賴氏、19.5%の柯氏をリードする結果がでた。ただ侯氏は新北市長に再選されたばかりで、市長職を投げ出し総統選に出馬すれば、マイナスに働く可能性もある。

総統選挙では、アメリカ政権側が民進党の政権継続を期待して支援工作を強めるのは間違いなく、国民党の政権復帰に期待する中国との「代理戦争」の様相を呈するかもしれない。

訪台に意欲を見せる野党共和党のマッカーシー下院議長が、総統選直前に台湾を訪問し、中国軍が2022年8月のような大規模軍事演習を再現すれば、台湾情勢は総統選挙と絡みながら「炎上」する恐れもある。

総統選が近づけば近づくほど、米中双方が妥協できる選択肢の「のりしろ」は、狭まる一方だ。

岡田 充 ジャーナリスト

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おかだ たかし / Takashi Okada

1972年共同通信社に入社。香港、モスクワ、台北各支局長、編集委員、論説委員を経て、2008年から22年まで共同通信客員論説委員。著書に「中国と台湾対立と共存の両岸関係」「米中新冷戦の落とし穴」など。「岡田充の海峡両岸論」を連載中。

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