「国共合作」で台湾の政権交代を狙う中国共産党 訪中した国民党代表を共産党が厚遇した理由
夏氏は、「両岸関係が現在と同じように緊張していた情勢下で、国民党は民衆の平和への渇望に答え、『氷を割る旅』によって一触即発状態だった危機を回避させた」と語った。その後、陳政権は露骨な台湾独立政策を展開し、頼りの日米両政権からも見放されて2008年の総統選挙で、国民党の馬英九総統の政権復帰を許すのである。
夏氏が何を訴えたかったのかわかると思う。次の総統選挙で国民党の政権復帰を実現するため、18年前と同じように「国共合作」をやろうということだ。これに対し王氏は「台湾の独立と外部勢力の干渉に断固として反対する」と応じた。
台湾独立派と外部勢力
国共合作の「共通の敵」として、台湾独立派と外部勢力による干渉を挙げたのだ。「外部勢力」とは主としてアメリカを指すが、政策内容や国際政治の局面によっては、日本が入る可能性も否定できない。
政権交代という目標実現のため「国共合作」を訴えたというのは「大げさでは」との疑問が聞こえそうだ。確かに、中国現代史に登場する2回の国共合作は、歴史的転換につながる重大事だった。
「第1次合作」(1924年1月~1927年7月)は、中華民国建国の父、孫文がソ連の働き掛けで実現したが、蔣介石らによる反共クーデターで解消。その後1937年9月、日中戦争拡大を受け、日本軍国主義を「共通の敵」に第2次合作が成立する。日本の敗戦でその目的は達成したが、国共両党は1946年の夏に内戦状態となり第2次合作は崩壊した。
この2つの「重大事」に比べれば、確かに政権交代は「小事」にみえるかもしれない。だが、北京はバイデン政権が蔡英文政権と二人三脚で進める対中政策の核心にあるのは、「1つの中国」政策の空洞化、骨抜きにあるとみている。
それは中国の建国理念の柱であり、歴史的任務である「台湾統一」の全面否定にほかならない「大事」なのだ。だから中国は、「1つの中国」をめぐる攻防を、歴史的意義のある戦いと見なしているはずだ。とくに、長期低落傾向と有力リーダー不在の国民党だけに、政権復帰の可能性がわずかでもあれば、またとないチャンスとみて不思議ではない。
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