「国共合作」で台湾の政権交代を狙う中国共産党 訪中した国民党代表を共産党が厚遇した理由
第3期に入った習体制の下で、台湾政策にも微妙な変化が出始めた。習氏は2023年の「新年のあいさつ」で、「海峡両岸は親しい家族。両岸の同胞たちが向き合い、歩み寄り、手を携えて前進し、共に中華民族の末永い幸福を作り上げることを、心から望んでいます」と、実に穏健なメッセージを発信した。
台湾統一や武力行使にも一切触れない「微笑攻勢」だ。1年後の台湾総統選での政権交代の可能性を意識しながら、中国との関係改善こそが台湾に「平和、安定、発展」をもたらすと台湾民衆に直接訴えたのだ。夏氏ら国民党一行への厚遇もその延長線上にある。
中国の台湾対応の変化を解くカギは、2022年11月の台湾統一地方選挙で、民進党が敗北したことにある。台北を含む21県・市の首長選で、野党・国民党が1増の13ポストを得たのに対し、民進党は1減の5ポストと結党36年来の惨敗を喫したのだ。
民意の主流は「平和、安定、発展」
敗因の1つは、蔡英文総統が選挙戦終盤、劣勢挽回のため、「自由と民主の最前線に立つ台湾に世界中が注目している」と、「抗中保台」(中国に対抗し台湾を守る)を争点化したこと。総統選挙と地方選挙では有権者の投票行動の基準が異なるのは当然だ。
国民党一行と会談した宋濤氏は2023年初め、両岸関係に関する雑誌に「台湾地方選挙は、『平和、安定、発展』が台湾社会の主流民意であることを示した」と書き、「台湾独立勢力が策を弄した『抗中保台』は人心を得られず、独立を企む陰謀は失敗した」と分析する文章を発表している。
台湾政治はすでに総統選挙モードに入っている。民進党の最有力候補は賴清徳主席(副総統)だが、弱点は台湾独立志向が極めて強いこと。総統選でも「抗中保台」を繰り返せば、有権者の反発を買い苦戦は避けられない。
頼氏は2022年の大みそか、中国との緊張緩和を目指すとみられる「和平保台」というスローガンを口にしたが、今度は台湾独立を志向する「岩盤支持層」の反発を招いた。
台北市長を2期務めた「民衆党」の柯文哲氏の出馬も確実視される。問題は国民党候補者。国民党は地方選でポストを増やしたが、「勝利したわけではない」と公式に認めている。朱立倫国民党主席は2016年の総統選で惨敗。2020年選挙では「ポピュリスト」政治家といわれた韓国兪・元高雄市長も、次第に政治家の能力の「メッキがはがれ」敗走した。
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