ロッテリアは売却「バーガー業界」閉店相次ぐ理由 勝ち組マクドナルドとのロッテリアの決定差

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ただ、競争が激しい業界なので、来店動機が必要だ。そもそもマクドナルドの利益率も10%程度。だからこそ、一定以上の客数を確保しないとビジネスが成り立たない。ゼンショーが、どういう集客方法を採用するのかまだ分からないが、筆者の予測では価格を下げて、客数を伸ばす作戦をとるのではないかと睨んでいる。

なぜならゼンショーは価格の勝負に大変強いからだ。現に、はま寿司はスシローやくら寿司が値上げをした中でも100円をキープしている。またなか卯の「目玉焼き朝食」(280円)は、松屋の朝食の最安値である「Wで選べる玉子かけごはん」(290円)や、吉野家の朝食の最安値の「納豆定食」(399円)と比較しても安い。

ゼンショーは多くのブランドを展開しているため、1つのブランドの利益率だけで考える必要がない。それはハンバーガーでも同じだ。業態ポートフォリオの中で、最適になるように計算して、ハンバーガーの価格をギリギリまで下げてくるのではないだろうか。

ハンバーガーにも「1000円の壁」?

マクドナルドは経営不振に陥っていた2013年に1日限定などで1000円バーガーを発売。一方のモスは、2003年から2006年にかけて「匠味」シリーズを販売したが、どちらも狙い通りの結果を出すことができずに終了している。やはり多くの人がチェーン展開するハンバーガー店に求めているのは手軽さだということだ。

 現在、モスバーガーは「モスプレミアム」という別ブランドで高級路線に成功している。2016年に「モスクラシック」としてオープンさせたブランドを地道に育てて「モスプレミアム」というブランドに結実。ポイントは「桜木町クロスゲート店」と「千駄ヶ谷店」の2店舗しかないという希少性の高さだろう。

そもそも希少性の高くないものに、そんなに高いお金を払いたくない。また、ハンバーガーにお金を出せる人がいるエリアも限られている。ここに「シェイクシャック」などの黒船バーガーが思うように店舗を拡大できない要因にもあると考えている。単価と客数を踏まえて、しっかりとエリアを選ばないと、すぐに失敗してしまうのがハンバーガー市場の難しさなのだ。

規模の利益が働くので、原材料費などのコストもコントロールしやすい。これはマクドナルドやモスバーガーにはない強みである。ゼンショーホールディングスの下で、ロッテリアの反撃が始まるかもしれない。

三輪 大輔 フードジャーナリスト

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みわだいすけ / Daisuke Miwa

1982年生まれ、福岡県出身。法政大学卒業後、医療関係の出版社などを経て2014年に独立。外食を中心に取材活動を行い、2019年7月からは「月刊飲食店経営」の副編集長を務める。「ガイアの夜明け」に出演するなどフードジャーナリストとしての活動の幅を広げ、これまでインタビューした経営者の数は 500 名以上、外食だけでも200名近くに及ぶ。

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