被災地支援に都立雪谷高校卒業生らが募金活動、地域での人的ネットワーク再構築の可能性も

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高校の同窓生ネットワークが、東日本大震災の被災者支援で大車輪の働きをしている。

震災後、いち早く街頭募金活動を始めたのが、東京都立雪谷高校の卒業生を中心としたボランティア団体「3Peace」(代表の大房明良さん、20歳)のメンバーたちだ(写真)。3月18日、大房さんら高校や中学時代の仲間である20歳前後の若者たちがJR京浜東北線蒲田駅東口の街頭で募金活動を開始。

「集まった義援金は、日本赤十字社の口座に、全額責任を持って寄付させていただきます。私たちは雪谷高校OBを中心としたメンバーです」と大きな声で町を行く人たちに訴えた。

次々と集まる募金。その多くは数百円~1000円という小口のもの。それがどんどんとたまり、18日から4日間で310万円に達した。23日には、郵便局から日赤に義援金を送金した。

被災者支援の街頭募金活動は今のところ、多くはない。政党や一部企業、福祉団体などによる活動を除くと、必ずしも活発とはいえない。また、募金を集めている団体の中には、趣旨や手続きが判然としないものも散見され、疑いの目で見られることも少なくない。

そうした中で、大房さんらの訴えに多くの市民が足を止めたのは、「雪谷高校OB・OGを中心とした……」と大きな声で訴えたことが大きい。雪谷高校野球部は2003年に夏の甲子園に初出場。それをきっかけに、地元での知名度も大きく向上。「同窓会も活性化した」(雪谷高校同窓会でホームページ運営を担当する柳瀬和之さん、70歳)。柳瀬さん自身も、20代の若者たちとともに街頭に立った。

大房さんは雪谷高校野球部でセンターを守った。部活で築いた仲間の結束力に加えて、自身も高校卒業後、カンボジアなどアジア諸国支援のボランティア活動を開始。3Peaceを結成した。大房さん自身はマレーシアをヒッチハイクで移動中に、東日本大震災の知らせを聞いた。そして、いてもたってもいられなくなって2日後に帰国。障害年金を専門とする社会保険労務士の母親と相談する中で、募金活動を思い立ったという。

大房さんらの募金活動や日赤への寄付の実績(郵便局での振替払請求書兼受領書)は、同窓会のホームページで紹介されている。「7月後半にはチャリティイベントを開催したい」と大房さんは意気込む。震災をきっかけに、問題意識を持った若者たちが結束しつつある。地域における人的ネットワーク再構築の起爆剤になる可能性もあるだけに、その行方に期待したい。
(岡田 広行 =東洋経済オンライン)

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