放送収入の減少続く「キー局と地方局の深い溝」 配信広告やIPビジネスで描く新たな成長モデル

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テレビ局の放送収入は今後もダダ下がりになるだろう。その原資たる視聴率が着実に下がっているからだ。2022年通年でゴールデンタイムのPUT(総個人視聴率)は36.2%から33.1%へと3.1%も下がった。その勢いは当分止まりそうにない。

仮にこの勢いで毎年5%ずつ放送収入が減少すると、2030年には2022年の6割にまで下がってしまう。

電通が毎年発表する「日本の広告費」によると、2021年の地上波テレビ広告費は1兆7184億円だった。2022年はそこから5%減少したとすると1兆6324億円、その6割だと2030年は9794億円と、1兆円を切ってしまう。乱暴な試算だが今の状況からすると十分ありうるのではないか。

「IPビジネス」で新たな収入を得る

経営企画的視点では、このグラフに別の事業収入を乗せていくべきだ、となる。実際、テレビ東京はすでにそんなグラフを描きつつあるわけだ。また各局とも「配信広告収入」を決算説明書で表現している。うまくいけば新たな事業収入としてこの配信広告が累乗的に増えていく可能性はある。またテレビ東京同様に「IP(知的財産)」による新たな収入を得る考え方もある。テレビ局に限らずメディア業界エンタメ業界はこぞって「IP」と言い出していて、オリジナルの原作を開発し、それをさまざまに映像化しグッズなども含めてビジネス化するべく躍起になり始めた。

放送収入の減少を配信広告やIPビジネスで補い新たな成長モデルを描く。簡単ではないが、この考え方に沿って組織を変革し社員の意識を変え、投資もダイナミックに推し進めることがテレビ局の生き残り方になってきた。そのことにすでに気づき、取り組んでいる局もある。

ただし、それは在京キー局の話だ。準キー局と呼ばれる関西のテレビ局、そしてさらに規模の小さなローカル局になると、同じ考え方がはたして通用するか、悩むことになる。

というのは、配信広告を収入化するには自社制作番組が必要だ。しかも例えばTVerに並ぶのはドラマやバラエティーなどのエンタメ番組ばかり。「IP」を自社で開発というのもジャンルとしてはエンタメ系になってしまう。ローカル局は東京のキー局が制作した番組を、自分たちのエリアで放送するのが主な役割。自社制作番組は関西局で3割、中京局(愛知・岐阜・三重をエリアとする)で2割、残りは1割程度と言われる。そのほとんどは報道・情報番組でドラマやバラエティーは関西局、中京局まで。ほかのローカル局はそんな予算もノウハウもないのだ。

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