一般に競争相手が少ない場合、価格競争に持ち込まなくても顧客を確保できるため、市場原理が働きづらい。結果、価格が高止まりしたまま横並びになりやすいのだ。ファイザーとモデルナの強気な価格設定は、典型例といえるだろう。
つまり、新型コロナに関しては当初、さまざまな種類のワクチン開発競争が繰り広げられたものの、その効果とシェアで2社のmRNAワクチンが世界を制したと言っていい。しかもユーザー側にとっても、両社の製品に大きな差は感じられない。どちらも無益な争いよりも、足並みを揃えるほうが得策と判断するに決まっている。
そもそも新型コロナワクチンの原価はいくらくらいか、ご存じだろうか。
「原価120円」を3500円で購入したイギリス政府
ワクチンの不公平撤廃を求める100超団体の連合体「The People's Vaccine Alliance」によれば、原価はファイザー製で1接種あたり1.18ドル(約120~160円)相当だという。これについてファイザーは特に否定していないようだ。
アメリカ政府は2020年、まだ開発中だった新型コロナワクチンについて、1億回分を約20億ドル(約2100億円)で購入する契約をファイザーと結んでいる(ロイター)。1接種あたり19.50ドル(約2000円、2回接種で約4000円)の計算だ。
原価の16倍の売値である。それでもこれは、破格の“ホーム価格”だ。
当然だろう。アメリカ政府は2020年5月〜2021年2月だけでも、ワクチンメーカー7社に新型コロナワクチン・治療薬の開発助成金として192億ドル(約2兆160億円)超を拠出、うちファイザー・ビオンテックには60億ドル(約6300億円)近い金額が渡っている。なお、次ぐモデルナには59億ドル(約6200億円)が投入された。(ミクスonline)
他国、とくに先進国が「売ってくれ」と言ってきたら、価格は2倍近くに跳ね上がる。例えばイギリス政府は、1接種あたり22ポンド(約3500円、2回接種で約7000円)で、1億8900万回分買い上げる契約をファイザーと交わしたとされる。原価の30倍だ。(ガーディアン)
なかなかの“ぼったくり”と感じるかもしれない。実際、ファイザーの新型コロナワクチンは、2022年に378億ドル(約4兆円)超もの売り上げを叩き出している。
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