札幌医科大学のサイトによれば、これまでに全世界で約50億人が2回接種(1回接種ワクチンは1回)を完了している。健康上の理由や反ワクチン主義の人はともかく、2回目接種まで完了しているけど追加接種は受けない、という人が多いのだ。
今のままでは「接種を続けられない」
いち早くワクチン確保に動いた欧米各国は、大量の在庫を抱えているに違いないし、この状況で有料になれば、接種率はさらに低下すると見て間違いない。
モデルナは2022年5月の時点で、毎年の追加接種の対象者として、50歳以上やハイリスクの成人、医療関係者など感染リスクの高い職業の人たちを想定し、世界人口の約21%(17億人)との推計を示した。しかし脱コロナへのシフトは思った以上に急激で、遠く及ばない可能性は高い。
こうした厳しい見通しが、「原価の120〜140倍」の最たる根拠というわけだ。
それだけではない。ファイザーもモデルナも一般医薬品と同じ流通に乗せるにはパッケージ変更が必須で、そこにコストがかかってくる。バイアルの問題だ。
新型コロナmRNAワクチンは当初から、超低温の冷凍庫を必要とするなど、クリニック側にとっては扱いづらい特殊なワクチンだった。それでも緊急措置との認識だったし、オミクロン株ワクチンからはある程度使いやすくはなった。希釈が不要となり、一定期間は冷蔵庫で保管(ファイザー製は10週間、モデルナ製は30日間)できるようにもなった。
だが現製品はまだ、ファイザーで1バイアル6接種分、モデルナでも1バイアル5接種分という作りになっている。つまりひとたびワクチンの入った小瓶を開封したら、当日中に5人ないし6人に打たねばならない。
希望が殺到していた頃ならともかく、接種希望者の都合や利便性を考えても、小規模に個別接種を請け負っているクリニックにこれだけの希望者集めは厳しすぎる。
ナビタスクリニックでも、とある日は新型コロナワクチンの接種予約が1人しか入らず、やむを得ず開封して実施し、残りを廃棄せざるを得なかった。世の中に大量に期限切れになるほどワクチンが余っていて、なおかつ無料配布されているから踏み切れたことだ。
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