だが、私自身の率直な感想としては、原価はともかく1接種あたり数千円なら、むしろ非常にリーズナブルとの印象だった。ナビタスクリニックでは予防接種にも力を入れていて、個人輸入でも扱ってきたが、1回数万円というワクチンはざらにあるからだ(ほとんどは数回の接種で半永久的な効果が得られるが)。
しかも、1接種1万円台なら、本国アメリカでは一般的価格らしい。
欧米では接種率10%台
例えば、大手ドラッグストアCVSでは、肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス 23)は141ドル(約1万8500円)、肝炎ワクチンは145ドル(約1万9000円)、髄膜炎ワクチン179ドル(約2万3300円)、帯状疱疹ワクチン205ドル(約2万6700円)、HPVワクチン261ドル(約3万4000円)、といった具合だ。(Fierce Pharma)
これらは毎年接種する必要はないが、数回接種が必要で、合計10万円を超えるものもある。
ただし、新型コロナと同じく毎年接種のインフルエンザは、アメリカでも1接種50〜95 ドル(約7500円〜1万2000円)だという。「1万4000円〜1万7000円」となると、やはり割高感は否めない。
しかもmRNAワクチンは、病原体の培養から始めていた従来のワクチンとは異なり、最新のバイオ技術で短期間に大量生産が可能だ。そう聞くと、むしろ低価格化が望めそうにも見える。
どこから「1万4000円〜1万7000円」という数字が出てきたのだろうか?
1月30日、アメリカ政府は新型コロナ非常事態宣言を5月11日に終了することを発表した。新型コロナワクチンへの助成も廃止となるため、有料化へのカウントダウンが始まったと言っていい。
その翌日、ファイザーは、2023年の同社の新型コロナワクチン「コミナティ」の需要が前年比3割減、売上高は前年比64%減の135億ドル(約1兆8000億円)となる見通しを明らかにした。
モデルナのバンセルCEOも、同社の売上高が昨年の184億ドル(約2兆1100億円)から、今年は「少なくとも50億ドル(約6500億円)」に縮小するとの予想を示した(Bloomberg)。同社は2021年時点で、売り上げの96%を新型コロナワクチン「スパイクバックス」に依存している。
事実、人々の関心は新型コロナワクチンからどんどん離れている。1月末時点で、国内のオミクロン対応ワクチン(初代もしくは2価)の接種率はやっと40%を超えた程度。海外ではさらに低調だ。アメリカは15%超、EUも約17%(2回目追加接種として)にとどまっている。
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