12年周期でなくてもOK「大規模修繕」の大誤解 築40年超は「115.6万戸」マンション管理の課題

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もし工事費用面での悩み、優秀な人材確保を希望するのならば春工事、秋工事という概念をなくすのも一案だ。別の時期に実施することで問題を解消できる可能性がある。

また工事日程とともによく質問を受けるのが、「夏場の大規模修繕工事はエアコンが使えないのですか?」というもの。大規模修繕工事においては、エアコンの取り外しをしたりすることはない。足場がかかるためストレスに感じる部分はあるかもしれないが、一時的に移動しなければならないなどといったことも必要ないため、安心してほしい。

大規模修繕工事の一般的な周期「12年」にこだわる必要はない

いまだにお客様から問い合わせが多い質問が「大規模修繕工事」とは何なのだろうか、というものだ。

実は建築業界に「大規模修繕工事」と呼ばれる工事内容に該当するものは、基本的にはないと思ってほしい。外壁タイルの補修工事や塗装・防水の工事、またシーリングの工事などの不具合箇所に足場をかけて一度にまとめて工事をするから「大規模修繕工事」と後に名付けられたに過ぎない。

翻って考えると、足場をかけて一度に行うから「大規模修繕工事」の効果があることになる。つまり足場をかけなくても直せる箇所であれば、特に大規模修繕工事に盛り込まなくてもいいのである。

直す必要がない箇所を「あえて」直していることも

例えば多くのマンションにおいて、鉄部を塗装、錆びた部分を補修して塗り直す工事は6年周期で組まれている。竣工から6年目に1度、その次の6年目に大規模修繕工事と重なるため、「そのタイミングでやりましょう」と計画されたものだ。

もちろん、当然12年目の大規模修繕工事での実施により、多少のコスト低減効果は期待できるかもしれない。ただ場合よっては、直す必要がない箇所を「あえて」直しているとも言い換えられる。

あえて足場をかけるタイミングにあわせて工事を行うのではなく、その時点での劣化状態を判断することが大切だ。結果、足場をかけなくても直せるという箇所に関しては足場をかけず、違うタイミングで直すというようなことを検討できる。そうすれば、できる限り修繕の周期を長期化し、修繕積立金の節約にもつながっていくだろう。

東京オリンピックやコロナ禍という事情から一時停滞していた大規模修繕工事。今、そのニーズが吹き出し、売り手市場、施工会社が有利な状態になりつつある。自分の住まいであるマンションを守り、適切に管理維持するためには、焦らずにその時点で劣化の状態を判定しながら工事を進めていってほしい。

長嶋 修 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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ながしま おさむ / Osamu Nagashima

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)、『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所公式HPはこちら
 

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