12年周期でなくてもOK「大規模修繕」の大誤解 築40年超は「115.6万戸」マンション管理の課題

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

さらに条件設定が細かければ細かいほど、受注後もさまざまな要望が出てくるのではないかという危惧を業者に抱かせてしまう。公募条件を狭めても、いい施工会社に出会えるわけではないとお断りしておきたい。

会社の規模も確かに大切だ。しかし先ほどお伝えした通り、何より現場代理人など働く人材の「人柄」が工事の成否に大きく影響する。書類ですごく厳しく選考するというよりは、実際に会って話を聞いて、人となりを見ることが重要になってくる。コミュニケーションがしっかり取れるかどうかが施工会社の選考基準の1つとなるだろう。

セオリー通りの劣化診断は必要?春と秋以外の工事は可能か

大規模修繕工事では通常、施工1~2年ほど前に「劣化診断調査」を行うのが一般的だとされている。大規模修繕工事で補修する範囲や内容をチェックするものだ。もちろん、どこをどう補修するのかを事前に調査するのは大切な工程である。ただし、築年数や立地条件によっては、劣化診断を調査する必要がない内容もある。

例えば比較的築年数の浅いマンション、時期としては1回目の大規模修繕工事をまだ迎えていないマンションにおけるコンクリートの中性化試験もその1つだろう。

そもそもマンションのコンクリートは本来、アルカリ性である。しかし時間を経て大気中の二酸化炭素と化学反応を起こし、弱アルカリ性へと変化していく。コンクリートの中性化と呼ばれる状態だ。コンクリートが変質することで、内部の鉄筋にも影響を及ぼし、腐食が進みかねない。そこでコンクリートの中性化試験を実施し、コンクリートの中性化による劣化の進行具合を調べるのである。

重要な検査ではあるものの、もちろん費用負担が発生する。一般的にコンクリートの中性化により内部の鉄筋までの到達は60年と言われており、果たして築浅のマンションで行う意味があるのか疑問符がつく部分であるとも言える。

これは一例だが、劣化診断というのは大規模修繕工事が今必要かどうかを判断するために行うものであり、必ず行わなくてはならないというわけではない。時期によっては目で見てわかる範囲で十分な場合もあり、ケースバイケースで省ける検査もある。都度判断を行うことが大切になるのだ。

春工事、秋工事が一般的とされてきた

工事の時期についても同じことが言えるだろう。大規模修繕工事のスケジュールは、年明けに足場をかけ始めて、夏場暑くなる前に足場を解体する春工事、お盆明けに足場をかけて年末までに足場を外す秋工事が一般的だとされてきた。

そのため、この2つの期間はどうしても工事が込み合ってしまう。春工事、秋工事は現場代理人をはじめとする優秀な人材は引っ張りだこになるため確保が難しく、繁忙期ゆえ相応のコストも必要になる。

次ページ12年周期は守ったほうがいい?
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事