「BEVで大苦戦」する日系メーカーが勝ち残る条件 中国市場でハッキリ分かれた「日本車の明暗」

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日本車は、低燃費や信頼性などの優位性から、買い替えニーズを満たしている。主な購入者は中間所得層以上であるため、ブランド力が物を言う。

特にトヨタは廉価帯をほとんど手がけておらず、ハイブリッド車(HEV)をラインナップする優位性もあり、逆風下でも販売台数の維持を実現できていると言える。

しかし、コロナ禍以降の中国市場で“競合ブランドの低迷”は、日本車にとって販売台数を増やす好機とはならなかった。中国での日本車の販売台数は、2022年に前年比12%減の450万台となった。500万台割れは2018年以来で、日系メーカーは揃って前年比実績を下回った。

中国では「カローラ」にもPHEVがラインナップされる(写真:トヨタ自動車)

トヨタは前年比0.4%減の194万台で、10年ぶりの前年割れ。ホンダと日産はそれぞれ12.1%減、22.1%減となり、投入車種が少ないマツダと三菱自動車も大幅な減となっている。実際、中国乗用車市場における日本車のシェアは、2020年の23.1%から2022年は17.8%へと大きく減少した。

足元の減速は、日本車の調整期入りを示唆するものなのか、あるいは中国の「ゼロコロナ政策」や車載半導体の不足による一過性の調整に過ぎないのか。ここからは、ブランド力の変化や市場競争から、4つの視点で日本車の実態を考察していこう。

大都市でのシェアとリセールバリュー

1つ目は、中国主要都市での販売減だ。北京、上海、広州、深圳が中国ハイエンド車の主な消費市場であるため、各社は上記4都市の新車市場に力を入れ、ブランド力の構築を図ろうとしている。

日本車の販売台数に占める上記4都市の割合では、トヨタが2022年に約11%と2020年とほぼ変わらないシェアを維持したものの、ホンダと日産はそれぞれ9%、6%となり、いずれも2020年比で約2ポイント低下した。なお、ドイツ高級車メーカーは20%前後、フォルクスワーゲンは8%台で推移している。

フォルクスワーゲンのクーペSUV「タイゴ」(写真:volkswagen)

ブランド力で大都市に浸透できなければ、コストパフォーマンスで地方都市や中小都市に注力することになってしまう。すると、値引き販売を強いられブランド力の低下をもたらす可能性がある。

2つ目は、日系中古車に対する評価の変化だ。競合ブランドと比べて中古車として売る際のリセールバリュー(売却時価値)の高さ、ブランド力が反映される重要な指標となるが、ここで気になる動きが見られる。

中国汽車流通協会による、2022年の平均残価率(車齢3年)を見てみると、フォルクスワーゲンが60.2%、日産が59.8%、マツダが58.9%であるのに対し、トヨタとホンダは70%を維持している。

トヨタとホンダは十分に「リセールバリューが高い」といえるが、2021年には80%超の残価率であったことから、ブランド力低下の傾向が考えられる。

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