「ピカソ」没後50年の今、女性関係に批判高まる訳 芸術家の破天荒な行動は見逃されてきたが…

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フランスの美術界は今、明らかに意図的に女性に注目している。それも美の対象としてではなく、美のクリエーターとしての女性の活躍に光が当てられ、さらに美術館トップに女性が起用され、まさに時代の転換期を示し、芸術界の女性への熱い眼差しは過去にないレベルに高まっている。

ルーブル美術館では初の女性館長が誕生

2021年9月、世界最大規模のパリのルーブル美術館の館長にロランス・デカール氏が就任(『ルーブル美術館「初の女性館長」誕生の意外な事情』参照)。彼女は、すでにパリのオランジュリー美術館、オルセー美術館の館長を務めたキャリアを持ち、文化遺産の国際協力担当相に就いたジャン=リュック・マルティネス館長の後任となった。大改装後のルーブルで若者にも魅力的な美術館づくりに取り組んでいる。

同じく2021年、フランス元老院(セナ)が所有するパリのリュクサンブール美術館では「女性画家、1780年―1830年」展が開催された。大革命前のアンシャンレジーム期の最後の十数年間、女性画家は前例のない注目と同時に男性王室画家らの抵抗の中にあった。その中心にいたのがマリー・アントワネットの肖像画家として知られるエリザベート=ルイーズ・ビジェ=ルブランで、同特別展の中心に据えられた。

同展のタイトルが「闘いの起源」とされていたのは、文字通り男性中心の美術界に女性が進出する闘いの起源を探る展覧会だったからだ。大革命を前後して数奇な運命をたどった女性画家たちは皆、苦労の連続だったし、男性と同格に扱われることもなかった。この展覧会がフランス美術界に転機を与えた。

2022年に入り、同じリュクサンブール美術館では、19世紀の終わりから20世紀初頭に活躍した女性画家たちの役割に焦点を当てた「パイオニア 狂騒の20年代のパリの芸術家」が開催された。フランスの芸術界が近年、いかに芸術と女性の関係を丁寧に再考しているかを物語るもので、フランスが解放感に酔いしれた狂騒の19世紀末から20世紀初頭が舞台だった。

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