ルーブル美術館「初の女性館長」誕生の意外な事情 「フェミニズムの国」フランスも実は男性優位?
コロナ禍のロックダウン(都市封鎖)が緩和されているフランスで、昨年10月から閉館していたパリのルーブル美術館が5月19日、厳しいコロナ対策規制のもとで再開した。第2次世界大戦時以降初めての長期閉館だったが、その間、館内の大規模な修復を行っていた。
そのルーブル美術館は今年9月1日、新しい館長を迎える。マクロン仏大統領より任命されたのは同館史上初の女性館長、ロランス・デカール氏(54)だ。ロランス氏は現在、パリのオルセー美術館の館長を4年務め、オランジュリー美術館の館長も兼務している。フランスメディアの多くは彼女を絶賛している。
彼女はジャーナリストで作家のジャン・デカール氏の娘であり、小説家のガイ・デカール氏の孫娘。パリ大学ソルボンヌ校とルーブル美術館付属大学で美術史を学び、美術史家としての顔も持つ。
1994年にオルセー美術館のキュレーターとなり、アメリカ・メトロポリタン美術館、イギリス・ロンドン王立美術館などと協力して野心的展覧会を手掛けたキャリアを持つ。
コロナ禍で27億円の寄付金を集めた
2007年には中東のルーブル・アブダビの開設プロジェクトでオペレーターに任命され、キャリアを重ねた。オルセー美術館では黒人モデルの作品を集めた「ブラックモデル」展でフランス近代絵画を現代的テーマで紹介する試みなどで注目された。コロナ禍前の2019年には年間370万人の来館者を集めている。
彼女が率いるオルセー美術館はコロナ禍で半年以上、閉館を強いられながら「オルセー・ワイド・オープン・プロジェクト」を立ち上げ、アメリカの常連客から2000万ユーロ(約27億円)の寄付金を集めた。閉館中に展示スペースを拡張し、650㎡の教育センター、2024年に国際研究センターの開設を準備中だ。
能力、キャリア、実績において申し分がないデカール氏は「すべての年齢、すべての社会・文化的背景を持つ来館者を迎える美術館にしたい」とルーブルのビジョンを熱く語っている。
そのルーブルは2018年に史上最多の年間1000万人の来館者を記録した。2019年10月から翌年2月まで開催された没後500年を記念した「レオナルド・ダ・ヴィンチ」展は、100万人以上の来館者を集め、空前絶後の展覧会となった。今秋からデカール氏は収蔵作品数、来館者数、展示スぺースともに世界最大の美術館の館長に就任する。
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