ルーブル美術館「初の女性館長」誕生の意外な事情 「フェミニズムの国」フランスも実は男性優位?
映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインによる数十年に及ぶセクシャルハラスメントが表面化した2017年、フランスは当初、カトリーヌ・ドヌーブやブリジッド・バルドーをはじめとする女優や作家ら100人が公開書簡で「『#MeToo(性暴力を告発する運動)』は、男性が女性を口説くという性の自由を妨害する」「ほとんどのセクハラ告発者は、偽善者ぶっている」「売名行為だ」と批判し、違和感を示した。
ところが、世界から猛烈な批判の声があがり、発言を撤回し、「攻撃されたと感じた被害者全員に敬意を表したい」「おぞましい行為の被害に遭われた方々に心から謝りたい」と謝罪した。この背景には映画界では女優がいい役が欲しいために、プロデューサーに媚を売るのは当然の行為という認識が、フランスの映画関係者にあったからだった。
コロナ禍での女性に対するDVの増加が社会問題に
2018年以降、フランスでは性的暴力被害者が次々と名乗りをあげ、さらにコロナ禍のロックダウンで、女性に対する暴力(DV)が増加し、暴力のエスカレートは社会問題に発展している。
フランス内務省統計サービス(SSMIS)によると、昨年3月時点の国家警察と憲兵隊が把握したフランス全土のDV事例は878件だったのが、今年3月には1598件と大幅増加した。もともとDVは、この10年間で約3倍に増えており、#MeeToo運動以降、泣き寝入りしていた被害者が声をあげるようになった。
5月末に仏南西部ドルドーニュ県で元交際相手を襲い、警察に発砲した重武装の元兵士(29)が36時間後の5月31日に逮捕された事件は、男が女の新たなパートナーを襲った事件だった。容疑者の男は過去に4度、DVで有罪判決を受けていた。DVによる警察特殊部隊の出動回数は今年に入り、54回と30%増加している。
警察特殊部隊のトップ、ジャン=バティスト・デュリオン司令官は「外出禁止措置で増えたDVとの関連は明白だ」「事件の多くは外出規制でストレスがたまり、家庭内のもめごと、恋愛問題などで暴力に走る例が増えている」と指摘している。弱者である女性が守られない社会に対する不満は高まるばかりだ。
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