ルーブル美術館「初の女性館長」誕生の意外な事情 「フェミニズムの国」フランスも実は男性優位?

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来春に大統領選を控えたマクロン大統領が、ルーブル美術館の館長に女性を任命したのは必然とも見られている。理由は次期大統領選で大統領続投に意欲を見せるマクロン氏が女性の支持を必要としているからだ。最新の世論調査では、次期大統領選の決選投票で戦う相手は、極右政党・国民連合(RN)を率いるマリーヌ・ルペン党首が最有力視されている。

そしてルペン氏がフランスの大統領にふさわしいと考えるフランス人は40%を超えている。前回2017年の選挙のときも、その1年前(2016年)の世論調査ではルペン氏が、最も大統領の椅子に近い候補者と言われ、大統領選では決選投票でマクロン氏と戦った経緯がある。

フランスは女性が大統領になったことはない。過去には2007年のセゴレーヌ・ロワイヤル候補が決選投票に駒を進めたが、ニコラ・サルコジ氏に敗れた過去があるくらいだ。その後は毎回大統領選でルペン候補が決選投票まで生き残っている。

極右のルペン氏を支持する女性も増えつつある

フランス世論は、これまで極右政党の大統領誕生を敬遠し、決選投票では主要メディアまでもルペン候補についてネガティブ報道を繰り返してきた。ところが既存の大政党を否定し、自身が結党した中道の共和国前進(LREM)をひっさげて誕生したマクロン政権によって、既存政党が劣勢に回っただけでなく、アメリカに同じ時期、トランプ政権が出現し、右派政党は勢いづき、ルペン氏への警戒感も薄れている。

既存政党に目立った大統領候補者がいない中、決選投票でマクロンとルペンの一騎打ちになる可能性は高まっている。ルペン氏は女性であると同時にRNをマイナーな極右政党から国政を担える政党へ脱皮させることに成功しており、得意とする治安対策、移民対策、貧困層を重視する社会保障政策で期待もされている。それにルペン氏を支持する女性も増えつつある。

6月下旬に行われる地方選挙でも、左右各党は地域議会を1つでもRNの牛耳られることを警戒し、特に左派の複数政党がまとまらなければ、RNが勝利する可能性も高いと見られている。今は過半数割れしている与党の共和国前進党(LREM)にとっても、今月の地方選挙は1年後の大統領選や続く国民議会選挙の試金石の意味合いを持つため、大物議員の閣僚13人を選挙に投入している。

ルペン党首は今回の地方選挙について「フランス国民は、ますますわが党の政策提案を歓迎している」と手ごたえを示している。危機感を強めるマクロン氏にとって、この1年は国民受けする政策を打ち出すことは必要不可欠。ルーブルのトップ人事もその中に含まれる。

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