図表に見るように、2022年における粗利益の対前年同期比は、5%程度だ。
仮に、粗利益に対する賃金・報酬の比率を従来の平均値43.4%にするなら、賃金支払総額の対前年比は5%程度になる。
これは、賃金総額であり、1人当たりの賃金ではない。しかし、従業員数に大きな変動がなければ、これによって賃金の動向を判断することができるだろう。
だから、連合のいう「5%程度の賃上げ」は不可能ではないわけだ。
しかし、問題は、粗利益の伸びを5%と考えてよいかどうかだ。
最近における粗利益の対前年増加率5%は、コロナからの回復が寄与しており、一時的な要素によって、長期的な傾向値よりは高くなっている可能性がある。
日本の場合、賃金を一度引き上げてしまうと、後で状況が悪化しても、それを引き下げるのはきわめて難しい。したがって、いま粗利益の伸びが好調であるとしても、企業としては、それが恒常的なものか否かを確かめると思われる。
5%賃上げは高いか?
2014年1~3月期から2022年7~9月期の平均では、粗利益の対前年同期増加率は、2.8%であり、最近の値よりはかなり低い。
仮に、粗利益の恒常的な増加率は、従来の平均値である2.8%程度と企業が判断すれば、5%賃上げは高すぎる。
実際、後に解説するが、これまでの名目賃金の伸びは、それより低い。
なお、上で見たのは、全企業(金融機関を除く)だ。しかし、中小零細企業では、粗利益の伸びはもっと低いことに注意が必要だ。
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