5%賃上げのムードが決して楽観視できない事情 企業の付加価値と照らし合わせて考えてみた

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粗利益(付加価値)の恒常的な成長率を5%と見るか、2~3%程度と見るかの判断に関して、政府の財政収支試算(「 中長期の経済財政に関する試算」、2023年1月24日 )も参考となる。

そこでは、「成長実現ケース」でも、今後の1人当たり名目成長率は、3%台だ。そして、より現実的な見通しである「ベースラインケース」では1%台だ。

これから考えると、5%の賃上げを恒常的に認めるのは難しいのではないか。

仮に5%近い賃上げをするにしても、後で引き下げることができるよう、一時的なものにするのではないだろうか。

2022年には、実質賃金が低下した

実際の賃金の動向はどうだったか?

次のグラフは、2022年1月以降の、賃金指数の対前年伸び率を示す(「毎月勤労統計調査」による。現金給与総額、5人以上の事業所、産業計)。☆

2022年における賃金の対前年伸び率(%)

物価高騰が顕著になったにもかかわらず、名目賃金の対前年伸び率は、9月を除いて2%以下にとどまった。

この結果、物価上昇率が高まるにしたがって、実質賃金の対前年増加率は低下し、4月以降はマイナスになり、しかも、その絶対値が傾向的に拡大した。

つまり、円安が進行した結果、勤労者の生活が貧しくなったのだ。

この状況が、今後大きく変化するとは考えにくい。

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野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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