刑事ドラマの金字塔「太陽にほえろ!」誕生秘話 刑事からの視点でテーマが「憎しみ」から「愛」に

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私の師匠にあたる人は千葉泰樹監督です。「青春とはなんだ」を企画した際、テレビ映画を定着させるために何が何でもこの作品を成功させようと考え、東宝のプロデューサーに紹介していただいて、『大番』シリーズを撮った東宝のドル箱監督の千葉さんにお会いしました。

テレビは戦前の雑誌『少年倶楽部』が果たしていたような「子どもたちが楽しみながら生き方を学ぶことができるような番組を作らなければいけない」ということを、千葉さんから教わりました。また「視聴者はテレビの放送内容はみんな正しいと思っているので、その真似をする。これも気をつけていなければいけない」と言われ、「太陽にほえろ!」でもこの忠告を守りました。「自分の家族に見せたくないような作品は絶対に作るな」とも。

ともにドラマを作った仲間たち

音楽では、青春ものはいずみたく、それ以後は、日本テレビ音楽の飯田則子が助けてくれました。「太陽にほえろ!」までのBGMは、譜面を作りオーケストラで演奏されたものを使っていましたが、「太陽にほえろ!」以降は、一つひとつバンドを作り、息の合った数人だけのメンバーで演奏されたものを使うようになりました。

これはショーケンのアイデアで、元ザ・スパイダースの大野克夫を紹介してくれました。実現に向けては飯田さんの力が大きかったですね。一生懸命口説いてそういう体制を作ってくれました。歌手の歌入りでなければ売れないと言われた時代に、需要に追いつかないほど売れ、「太陽にほえろ!」がテレビ映画のBGMの世界を一新したとまで言われました。その手法は「俺たちの勲章」「俺たちの旅」などのトランザムや、「俺たちは天使だ!」のSHOGUN、「いろはの“い”」のゴダイゴなどへと継がれていきました。

脚本では小川英と鎌田敏夫です。「太陽にほえろ!」の表の立役者が石原裕次郎だとすれば、陰の立役者は小川英です。脚本は設計図であり、その良し悪しで作品の価値は決まってしまいます。「太陽にほえろ!」では特に脚本に重点を置いていました。小川は脚本直しの天才で、下書きの脚本家の意を汲んで見事に整理してくれました。小川が労を惜しむことなく、根気よく付き合ってくれたおかげで、「太陽にほえろ!」は常に質の高い台本を作ることができました。

鎌田敏夫は「青春」シリーズからの長い付き合いです。特に「俺たちの勲章」では、松田優作と中村雅俊のキャラクターを対比させ、彼らの魅力を存分に引き出し、男の心意気をうまく描いてくれました。私も大好きなドラマです。

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