今は「働く人々でさえ飢えている」英国のリアル 「生活費危機」の恐るべき貧困化インパクト
最も厳しい状況に置かれている労働者世帯にしてみれば、今回の危機はかなり以前から始まっていた。
イギリスでは雇用が増加し、失業世帯は減っているにもかかわらず、仕事を見つけた人々の多くがまともな生活を送れずにいる。そうした中で物価上昇率は41年ぶりの水準となり、賃上げも追いついていないことから、こうした人々の生活は一段と不安定なものになっている。
10年にわたる保守党政権の緊縮財政によって、勤労者世帯を含む多くの低所得者世帯に対する給付金も削られてきた。2016年以降、多くの職種で世界トップクラスの最低賃金を設定してきたイギリスでは、その恩恵に預かった低所得者も少なくない。とはいえ、十分な労働時間を確保できない人も多く、低所得者層の所得の伸びは、ドイツやフランスといったほかの西側諸国よりも鈍いものとなっている。
「過去10年があまりにもひどかったせいで、状況はなおさら厳しいものになっている」と、生活水準問題に焦点を当てる独立調査機関、レゾリューション財団のエコノミスト、グレッグ・スウェイツは語る。
そして昨年10月には、消費者物価指数が前年同月比で11.1%上昇。中でもエネルギーと食料品の値上がりが大きく、収入の多くを必需品の購入に充てざるをえない低所得者層はとりわけ厳しい打撃を受けている。物価上昇率は12月に入って多少鈍化したとはいえ、それでも前年同月比で10%以上も上がっている。
フルタイムで公共の仕事をする人たちまで…
子どもの貧困に関する年間数値など、重要統計の中にはまだ最新の数値が公表されていないものもあるが、働く親を含む多くの労働者が深刻な圧力にさらされているのは明らかだ。子どもが家で腹をすかせていることを示す証拠も増えている。
フードバンクに頼る勤労者世帯の割合はまだ少ないとはいえ、フードバンク利用者に占める勤労者世帯の割合は今では無視できない水準だ。イギリス各地で食料配給所を運営し、2022年上半期に30万人以上の新規利用者を記録したトラッセル・トラストによると、2022年半ばの利用者の5人に1人は仕事をしている人がいる家庭の人たちだったという。