今は「働く人々でさえ飢えている」英国のリアル 「生活費危機」の恐るべき貧困化インパクト
ロンドンのハックニー・フード・バンクは昨年12月、647人の子どもたちに食事を提供したが、これは前年の330人の倍近い人数だ。学校によっては、福祉制度に基づく受給資格者だけでなく、すべての生徒に無料の食事を提供するようになったところもある。ロンドンの貧困地区にある、ある学校の校長は、朝食として学校が正門で配っている無料のトーストに頼る子どもや親が増えてきたと話す。
「救急隊員や教師がフードバンクに行くのを見かける」
ロンドン全域の団体に余剰食品を提供しているフェリックス・プロジェクトは最近、供給先として支援する183の慈善団体の半数から、公共部門でフルタイムの仕事をしている人たちまでもが初めてサービスを利用する状況になっているとの報告を受けた。
「救急隊員や教師がフードバンクに行くのを見かける」。ロンドン東部のフードバンクで働くキングスリー・フレドリックは、忙しいシフトの終わりにそう言った。「このことは地域社会や国について、何を物語っているのか?」。
イギリスの研究機関、ジョセフ・ラウントリー財団の分析によると、ロンドンの低所得者層は家賃の引き上げ圧力も重なり、生活費危機の中で最もきつい影響にさらされている。とはいえ、この危機は首都ロンドンにとどまらず、スコットランドやイングランド北部にも厳しい打撃が広がっている。
そうした中で、与党・保守党の議員の中には、フードバンクの需要は本当のニーズを表していないと主張する者もいる。リー・アンダーソンはその1人で、フードバンクを利用する人々は「まともに料理ができず、ゼロから食事をつくれず、家計の予算を管理できない」ことが本当の「課題」だと述べた。
労働・年金省の広報担当者は、政府は国民の家庭が苦しい状況にあることを認識しており、生活費危機の渦中にいる人々の支払いを支援するため、少し前に何十億ポンドもの資金を投入したと話した。