科学調査で判明、「ストーカー予備軍」5つの要因 博多ストーカー殺人事件の容疑者は多くが合致

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博多の事件の容疑者について、報道されたことをもとに、これらのリスクファクターを当てはめてみると、若年である、元恋人が対象である、拒絶されたことが動機、2週間以上の継続、交際中から粗暴な言動があった、認知のゆがみ(「相手が悪い」などと供述)などが当てはまる。

さらに、過度な飲酒歴や青年期の数々の問題行動歴なども報じられており、パーソナリティの問題(粗暴性、共感性欠如、社会的スキルや感情統制スキルの欠如)も強く示唆されているところである。

わが国でも、ストーカーの危険性について、単なる印象や直観に基づいて判断するのではなく、早急にこのような科学的に妥当なリスクアセスメントツールを用いるべきである。

不十分な日本のストーカー対策

ストーカー規制法の制定とその改正によって、以前に比べるとストーカーに対して様々な対策が講じられるようになってきた。とはいえ、その実施や効果は限定的であると言わざるをえない。

たとえば、警察庁は「ストーカー被害防止のためのポータルサイト」を設置しているが、そこで得られる情報といえば、相談窓口に関する情報くらいのものである。相談窓口としては、婦人相談所、配偶者暴力相談支援センター、男女共同参画センター等などがある。被害者が相談できる窓口が増えてきたことは望ましいといえるが、そうはいっても、必ずしもストーカー問題の専門家が対応するとは限らない。

また、ストーカー総合対策関係省庁会議による令和4年版の「ストーカー総合対策」では、加害者対策についてはわずか1項目しか挙げられておらず、そこでは「ストーカー加害者に対しては、その者が抱える問題にも着目し、関係機関が連携しつつ、その更生に向けた取組を推進するものとする」と述べられ、すでに重大な加害行為を行った者への再犯防止策としての「加害者プログラム」の実施が検討されているにとどまっている。

つまり、現時点では、今回のような暴力加害リスクが大きい者に対する「予防的措置」は、警察による「警告書」「禁止命令書」などを除いて、ほぼ皆無であると言ってよい。もちろん、接近禁止命令などは一定の抑止効果はあるだろう。とはいえ、もう破れかぶれになって「どうなってもいい」と思っているような加害者や危険性の大きな加害者には、ほとんど役に立たない。事実、今回の容疑者にもこのような措置が取られていたが、事件を未然に防ぐことはできなかった。

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