防衛費増額による真の代償が「増税」ではない理由 「今を生きる世代」が分かち合うべき負担の正体

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したがって、われわれ国民は、防衛力の強化が始まったら、増税されなくとも、自動的にインフレという負担を課せられることになる。

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もし防衛力を急激に増加させれば、その代償として、国民は高インフレによって生活を圧迫されることになるだろう。しかも、その高インフレという代償を払うのは、「今を生きる世代」である。要するに、国を守るために、今を生きる世代が共有しなければならない真の負担とは、税ではなく、高インフレなのである。

その意味において、「有識者会議」が、防衛力の強化には「自らの国は自ら守るとの国民全体の当事者意識」が必要であり、その負担は「今を生きる世代全体で分かち合っていくべきである」と言ったのは、正しかった。ただ、資本主義における政府の財源についての理解が間違っていたのである。

なお、資本主義の仕組みやその下での国家財政のあり方について、この短い論考では十分に説明できていないので、詳細は『世界インフレと戦争』を参照願いたい。

中野 剛志 評論家

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なかの たけし / Takeshi Nakano

1971年、神奈川県生まれ。元・京都大学大学院工学研究科准教授。専門は政治経済思想。1996年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。2001年に同大学院より優等修士号、2005年に博士号を取得。2003年、論文‘Theorising Economic Nationalism’ (Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に山本七平賞奨励賞を受賞した『日本思想史新論』(ちくま新書)、『TPP亡国論』(集英社新書)、『富国と強兵』(東洋経済新報社)、『奇跡の社会科学』(PHP新書)などがある。

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