ペットブームで経営改革を迫られる「動物病院」 「経営と診療の分離」がいま求められている

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いまでは、CT、MRI、超音波検査なども受けられるようになってきていますし、救命救急医療も存在します。腫瘍の研究や再生医療の研究といった人間の医療でもホットな領域についても、かなり注力されています。麻酔の技術をはじめ、手術用の道具や検査用の機材などが日進月歩で新しくなり、種類も格段に増えました。

こうして見ると動物病院の経営も順風満帆のように思えるかもしれませんが、話はそう単純ではありません。むしろ私は、いまが動物医療という産業の変革期であると感じています。

一部の動物病院は利益を減らしている

そもそも、ペットの飼育頭数に対して動物病院は供給過剰気味で、競争が激しくなっています。

ペットを対象とする動物病院の施設数は、2021年の農林水産省への届け出数としては1万2千435施設。2018年が1万1千981施設だったことから、この3年間は1年あたり約200のペースで施設が増えている計算になります。

一方で、一般社団法人ペットフード協会が出した「2021年全国犬猫飼育実態調査」によると、犬の飼育頭数は約710万頭、猫は894万頭と推計されており、犬については2016年以降6年連続で減少。猫については2021年にわずかな増加があったものの、ほぼ横ばいの状況が続いています。

動物病院の数は増えているにもかかわらず、ペットの飼育数の伸びはあきらかに止まっているというのが、現在の動物病院とペットを巡る状況です。ビジネスとして見れば、事業環境は厳しくなっていると言わざるをえません。

犬の飼育頭数が伸びていた頃を思い起こすと、春の決まった時期にワクチンを打っているだけでも利益が伸びていくだろうという楽観的な経営でも成立してしまう状況でした。

それも頭打ちになり、勢いが衰えたところで、ペットビジネスに本格的な変化の波がやって来ています。動物病院の専売だった商品がより安価にネット通販で購入可能になるなどして、一部の動物病院は利益をかなり減らしているのです。

そこで新たな顧客を得るために、診療できる科目の領域を広げようとする動物病院も出てきましたが、新たな戦力となる獣医師を自分たちの病院に迎え入れ利益をあげていくのは簡単なことではありません。優れた人材を得るための採用にはじまり、組織の再編成、機器類の購入、集客のための宣伝などさまざまなハードルがあります。

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