ペットブームで経営改革を迫られる「動物病院」 「経営と診療の分離」がいま求められている
多くの動物病院が、これまでそういったノウハウを蓄積していないのですから、獣医師を増やすためのコストだけがかさみ、経営を圧迫するという事態も起こっています。
動物病院の経営は、これからさらに厳しい時代を迎えるとわたしは睨んでいます。
特に今後の経営に影響を与えそうなのが、スタッフの労務管理のリスクやペットオーナーの方々とのやりとりにおける訴訟リスクなどです。
動物病院は個人経営が多く、なかには人間関係だけに頼って労務管理を徹底していないところもありますが、「ペットの命に向き合う仕事なのだから、残業には目をつぶってくれ」という考えはもはや通用しない時代です。いわゆるブラック企業的な労働環境を続けている動物病院のコンプライアンス違反は、経営上の大きなリスクにつながります。
また、ペットオーナーのなかで、〝ペットの地位〟が上がっていくにつれ、動物の扱いや医療ミスからの訴訟が発生するリスクも、どんどん高まっていくでしょう。
そして動物病院は今後、間違いなく「もっと便利に」というペットオーナーからの強いプレッシャーに直面するはずです。他の業界では当然となっている予約システムや評価サイト、電子決済への対応などは、動物病院でも遠からず不可欠になるでしょう。
経営と診療を分離させる
そんな現実があるからこそ、わたしは経営と診療を分離させて、チーム経営を行う必要があると考えています。
多くの動物病院は、院長である獣医師が経営も兼任しています。しかし獣医師は診療で忙しく、経営の仕事にほとんど時間を割けていないのが実態ではないでしょうか。
獣医師には、ある程度の自己犠牲もいとわない社会的な仕事であるという、尊い想いがあります。獣医師や動物病院のスタッフが犠牲になって懸命に働くことが、ある種〝あたりまえ〟になっている面も否定できません。このような環境である程度経験を積んだ獣医師が独立し、新たに動物医療を開業するのが典型的な獣医師のキャリアです。そうして同じような個人経営の動物病院が再生産されていきます。
そもそも獣医師には、動物病院の経営を学ぶ機会すら十分に用意されていません。これまではそれでも成り立ってきたかもしれませんが、先述したような今後の課題に、経営という視点を欠いたままで対応していけるのでしょうか。
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