地方の島にも続々開設「子ども食堂」急増の"なぜ" 前年より1300カ所増、地方に多く展開している

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子ども食堂は、前日から丸一日かけて食材の用意や下ごしらえなどをする必要があり、「無理なく継続するためには、月1回開くのがやっと」。

ただ、「準備のときも、仲間同士集まっていろんな話をするのが楽しいし、ストレス解消になります。子ども食堂のボランティアと言うと、ハードルが高そうに思えるかもしれませんが、関わってみると本当に楽しいんです」と話す。

小川さんは仲間とともに2017年、ふれあいっこ三ツ沢を立ち上げた。長年、民生委員の主任児童委員を務める中で、高齢者の情報は得られても子どもの話はなかなか耳に入らず、「子育てがあまりにも、家庭という閉じられた環境でのみ行われている」ことを痛感してきた。

そこで、食堂を通じて地域の人々に、もっと子どもへの関心を持ってもらおうと考えた。食堂に加えて、学習支援や子どもたちが自由に過ごせる“居場所”、プログラミング教室なども実施し、ほぼ毎週1回、どこかの拠点が活動している。

学習支援では、勉強が苦手な子や外国人を積極的に受け入れている。取材した日の授業では、ボランティアの大学生や主婦がほぼマンツーマンで指導に当たり、外国人の生徒には、日本語教師の資格者がついていた。夏休みには美術の先生に絵画教室を開いてもらったり、地元の折り紙が上手な人を招いて、折り方を教えてもらったりもする。

ふれあいっこ三ツ沢
「ふれあいっこ三ツ沢」の学習支援拠点の様子。トランプをして遊ぶ子どもたち(筆者撮影)

拠点の利用者の中にはネグレクトや教育虐待、発達障害から来る生きづらさなどの困りごとを抱えた子もいる。時にはシングルマザーから「恋人のことを子どもにどう伝えればいいか」といった相談を持ちかけられることも。

とはいえ、ほかの地域に比べてとくに生活困窮世帯が多いわけではなく、子どもたちの間では「次の春休みはUSJに行く」「ディズニーランドに行った」といった会話も日常的に交わされる。

小川さんはふれあいっこ三ツ沢の役割を「子どもの居場所であると同時に、担い手の居場所でもある」と語る。常連のボランティアはもちろん、時折手伝いに来る高齢者らも子どもたちに「ありがとう、おいしかった」と言われることで、大きなやりがいを感じるからだ。

「食という営みは、人と人とのつながりをつくりやすい。食を通じた子ども支援をきっかけに、老若男女すべての世代が集まれる場をつくることが目標です」

離島にも増加している「にぎわい」の場

NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえが2022年12月に発表した調査結果によると、子ども食堂の数は2022年、前年より1317カ所多い7331カ所に増えた。コロナ禍のため、集まっての会食を再開している団体は半数弱にとどまる一方、団体ごとに弁当や食材の配布や子どもたちの居場所など、可能な範囲で多様な支援を展開していた。

調査でとくに目立ったのが、地方での増加だ。島根県では前年の2.8倍に、徳島県が1.8倍に、鹿児島県が1.6倍に増えたほか、静岡県や富山県でも大きく数が増えた。むすびえによると島根県では、食堂の運営者に情報提供やアドバイスを行う「地域コーディネーター」を自治体がバックアップしたことが、増加に大きく寄与したという。

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