トヨタ、「数字」に触れない投資家向け説明会

初の個人投資家向け説明会で語られたこと

社長講演の中では自身の幼少期も披露

国内外のさまざまな部門を担当し、トップに就任したのは2009年6月のこと。同年3月期の業績はリーマンショックの直撃で4000億円強の最終赤字(2008年3月期は約1.7兆円の黒字)でどん底の状態。

さらには、意図しない急加速によるリコール問題によって、2010年2月に米国議会の公聴会出席を余儀なくされた。今回の説明会でも米国の一件に触れ、「トヨタの全てを受け止める責任者としての覚悟が強くなった」と語った。人知れぬ葛藤の日々を経て、トップ就任後に経験した数々の修羅場で鍛えられたということだろう。

昨年5月に公表した2015年3月期の営業利益予想は2.3兆円だったが、今年2月にはそれを2.7兆円に引き上げている。リーマンショック以後のV字回復を受けて、昨年は5年ぶりに賃金ベアを復活させ、部品メーカーに対して行ってきた半期ごとの価格改定(1%程度の値下げ)を初めて見送るなど、さまざまなステークホルダーへの配慮にも余念がない。

株主が期待すること

投資家向け説明会で展示された往年の名車。写真は1936年に発売された「トヨダAA型乗用車」のレプリカ。当時の価格は3350円だった

初となった今回の個人投資家向け説明会では、社長による基調講演のほか、役員への質問コーナー、トヨタの歴史や往年の名車の展示、工場の改善実例や技能実演、燃料電池車「MIRAI」の試乗会も行われた。

「社長の話がわかりやすく、値上がりで儲けるのではなく、株を持ち続けて応援したくなった」(愛知県の男性(62))、「自動車にはあまり関心はなかったが、愛知で就職活動するとトヨタと関係する会社がほとんど。すごい会社で興味が湧いてきた」(愛知県の大学生(21))など、話を聞いた範囲では評価の声ばかりだった。

もっとも、現在のトヨタ株主に占める個人投資家の割合は約12%。当然、ほかの株主からの目を意識する必要もある。たとえば、従来から掲げる配当性向は3割で、利益拡大に伴って配当額は年々拡大してきた。最高益更新が見込まれる中、3割という配当還元率を引き上げるかどうかは、ひとつの注目点だろう。

今回の投資家向け説明会で、「グローバルトヨタを率いる責任者として、信用と信頼に裏づけされた企業と投資家の皆様との新しい関係を作りたい」と述べた豊田社長。理念に共感して長期的な安定株主になってくれる投資家もいれば、目先の実益を強く求める投資家もいるはず。さまざまな期待が寄せられる中で、「意志ある踊り場」の具体的な成果がよりいっそう問われることにもなりそうだ。

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