金融資産が8674億円もあるのに税負担がないNHK 受信料の「1割値下げ」はまやかしでしかない
良質な番組制作に外部の力を借りること自体は批判の対象になる話ではないが、NHKは番組制作予算が減った分を、外部の制作会社にシワ寄せしていないと言い切れるのだろうか。
NHKは「外部の制作会社には適正な対価を支払っている」と胸を張るが、外部のディレクターからは「出張ロケの現場では、NHK本体の人たちは宿代はじめ費用はすべてNHK持ちなのに、制作するフリーランスは自分が知る限り、基本自腹。宿代や移動費を払える資力がないフリーランスは出張ロケにすら参加できない」という声が出ている。
第2に、先に述べたように事業収支と事業CFの乖離が大きいことだ。減価償却費は年々増加傾向にある。2021年度の連結の減価償却費は858億円。この分がキャッシュアウトを伴わない事業費用に計上されており、事業収支の何倍ものCFが手元に残るのである。
そして何よりもNHK本体は法人税負担がない。一般事業会社の税金等調整前当期純利益に当たる税金等調整前事業収支差金は、連結で478億円だ。
このくらいの税前利益があると、一般事業会社なら140億〜150億円前後の税負担になるが、NHKの税負担は単体ではゼロ、連結でもわずか25億円。納税義務を負っているのは株式会社形態の子会社だけだからだ。
税負担がないうまみ
世の中で非課税の扱いを受けている公益法人でも、収益事業を営めばその分は課税対象になる。NHK本体は収益事業を営めないため、子会社の株式会社群で収益事業を営み、NHK本体の放送事業はすべて公益事業ということになっている。ドラマもバラエティー番組も、NHKが放送すれば公益事業で民放が放送すれば収益事業というのが、現行法の立て付けだ。
自助努力で収入を確保しなければならない民放とは異なり、NHKは収入を法律によって守られ、番組制作に莫大な費用を投入し、なおかつ毎年、数百億円規模の余剰資金を生み続け、貯め込み続けても課税されない。これほどの利益を生んでもなお、NHKを非課税扱いし続ける現行の法律に、根本的な矛盾を感じざるをえない。
NHKが視聴率、それも民放同様に若年層の視聴率を気にする理由も不可解だ。民放はスポンサーがその年齢層をターゲットにしたCMを流したいから、番組制作もその年齢層の視聴率を意識しなければならない。
だがスポンサーの要望に縛られることのないNHKが、若年層の視聴率にこだわるのは、番組への支持率をNHKそのものへの支持率にすり替えることを目的に、手っ取り早く数値化できる視聴率に安易に飛びついているだけなのではないのか。もしそうなら、NHKは自身の使命を完全に見誤っているというほかない。
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