金融資産が8674億円もあるのに税負担がないNHK 受信料の「1割値下げ」はまやかしでしかない
NHKは東京・渋谷の放送センターの建て替え計画を持つ。2021年に着工し、2036年に全体の完成を目指している。この建て替えのために2017年3月期に総工費と同額の1700億円の積み立てが完了。着工によって一部が取り崩され、2022年9月末時点で1693億円となっている。
建て替えの積立金以外に、その4倍に当たる6981億円も貯め込んでいるわけで、いったい何のために、放送センターをあと4回も建て替えられるほど貯め込まねばならないのか、理解に苦しむ。
NHKは2023年度に約700億円を原資に受信料を値下げする。700億円という金額は年間の受信料の1割に該当するが、連結事業収支差金のわずか1年半分、連結剰余金残高の13%程度、連結金融資産残高の8%程度でしかない。
長年貯め込んだものを吐き出せば受信料はもっと下げられるのに、そんな気は毛頭ないことがわかる。
経済界出身会長の意図
2022年6月の放送法改正で受信料の不払い世帯に対しては割増金も徴収できるようになった。公平性確保を盾に、毎年多額の余資を生んでいる実情には頰かむりしたまま、受信料は申し訳程度にしか下げない。
受信料は番組の視聴料ではなく、公共財たるNHKを支えるための国民負担だからと、衛星放送のスクランブル化すら拒絶する。それなのに、なぜかその受信料で制作した番組のアーカイブ視聴は受益者負担とし、受信料の負担者に無償もしくは安価に開放するということもしない。
今月、NHKの会長は、みずほフィナンシャルグループ元会長の前田晃伸氏が退任し、日銀元理事でリコー経済社会研究所の元所長、稲葉延雄氏が就く。
2008年以降、会長職には福地茂雄氏(アサヒビール元会長)、松本正之氏(JR東海元社長)、籾井勝人氏(三井物産元副社長)、上田良一氏(三菱商事元副社長)、前田氏と、外部からの登用が続いた。
いずれも経済界出身であるとともに、NHK改革を政治課題と位置づけた官邸が、自ら人事権を行使して送り込んだ会長たちである。
民間企業は自力で収益を稼いで税金も払うが、NHKは収入を法で保証され税金も払わず、ますます貯め込みを加速している。
それはNHKをコントロールしたい官邸との駆け引きの結果であることに、国民はいいかげん気づくべきだろう。
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