「原発回帰」大転換に政府審議会委員が激怒する訳 原発推進が前提?発揮されない「聞く力」

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――しかし、反映されずに会議は終了してしまったのですよね。その10日後、西村康稔・経産大臣に直接言う機会がきたのですね。

12月18日のNHKの日曜討論「原発・エネルギー政策を問う」から私に出演依頼があったんです。西村大臣がメイン出演し、4つのテーマで話すという説明がありました。西村氏と初めて顔を合わせました。

この番組で、松久保氏は次のように主張した。
「原子力小委員会の委員21人のうち2人しか脱原発がおらず、国民の意見も問わずに決めた。民主党政権時代にはパブコメ、討論型世論調査などやってきた。今回丁寧なやり方をやらず、わずか3カ月で決めたことは非常に問題だと思います」
西村大臣の答えは、次のような内容だった。
「エネルギー価格が上昇し、需給逼迫も考えられるとして、30数回、1年にわたって議論してきています。総合エネルギー調査会ですべてフルオープンにしてさまざまな意見をうかがってきました。とくに慎重な方のご意見をうかがう会も2回設けてヒアリングを行い、かなりの回数を重ねて議論してきた。適切なタイミングでパブコメを実施したいと思う。国民の皆様にも丁寧に説明しながら、ご意見をいただきながら進めていきたいと考えています」
議論はさらに続いた。
松久保:「フランスは56基ある原発のうち30基が止まっている。配管の劣化、点検、トラブルとか。電力需給逼迫が起こっている。(中略)劣化事象によって、安全性が損なわれて運転が止まるということもありうる」
西村:「フランス、イギリス、アメリカ、オランダ、こういった国々など運転期間の延長、次世代の革新炉と、両方を追求している。日本も同様の方向で、あらゆる選択肢を追求しながらエネルギーの安定供給を図っていきます」

丁寧な形で議論を進めていくべき

――議論は結局、どうなったのですか。

私は原発を使うことが逆に電力需給逼迫を招いていると指摘をしたのですが、西村大臣は答えませんでした。そして番組の最後に、再びパブコメについて聞けました。私はこう言ったのです。

「原発を積極的にやるとしても、いずれは破綻する。カーボンニュートラルに向けてどんどん時間がなくなっていく中で、まずは原発をどんどん進める政策をまず差し戻し、もう少し幅広い形の専門家を集めて、国民の意見もきちんと聞いて、丁寧な形で議論を進めていくべきだ」と。

それに対して西村大臣は、審議会での議論はすべてインターネット中継されており、いろんな意見も聞いているとし、「国が前面に立って責任を負う形で説明会を開いたり対話集会をやったりということも考えていかなきゃいけない。パブリック・コメントも求めていきたい」と言いました。

しかし、パブリック・コメントを求めるといっても、12月22日のGX実行会議で政策を決定したあとに「国民の意見を聞きました」では何の意味もないと思います、と私は西村大臣に指摘しました。 

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