以上で述べたことを年齢別に追えば、つぎのようになる。
(1) 15歳から24歳まで:労働力率は46.6%つまり、約半数の男性が働いている。これらのうち約半分を占める正規雇用者は、高卒の人々であろう。非正規は大学生のアルバイトだろう。
(2) 25歳頃には、大学卒業生も就職して働き始め、労働力率は約95%になる。正規雇用者が9割近い。つまりほとんどの男性が働き、そのほとんどが正規だ。
この状態が54歳頃まで続く。賃金も年齢とともに上昇する。
55歳頃に賃金が最高になる。
(3) 50代の半ばごろから非正規社員への移行が行われ、賃金もカットされる。
59歳頃までは、労働力率は95%のままだ。つまり、ほとんどの人は、非正規になり賃金が低下しても、働き続ける。
(4) 60〜64歳では、労働力率が84%に低下。つまり、それまで働いていた人の約12%が引退する。ただし、この年齢では、公的年金は受給できない。
(5) 65歳になると年金が受給できるので、多くの人が引退し、労働力率は35%程度に低下する。
賃金引き上げの恩恵にあずかれぬ人々が約半分
賃上げの恩恵を受けられる人は、上記のうち(2)に属する人々(25歳から54歳)に限られる。この年齢階層の男性総人口は、約2340万人だ。
それに対して、上記のうち(3)、(4)に属する人々(55歳から64歳)は、働いていても非正規なので、賃上げの恩恵を受けるのは難しいと考えられる。この年齢階層の人口は約745万人だ。
そして、65歳以上の人が約1534万人おり、彼らは、賃上げとは無関係だ。物価高騰の被害を受けるだけである (年金はインフレ・スライドするが、マクロ経済スライドが発動されるので、年金名目額はほとんど増えないだろう)。
結局のところ、賃上げの恩恵を受けられる成人男性は、成人男性全体の約半分でしかないということになる。しかも、(2)に属する人々の中でも、中小零細企業の雇用者の場合には、大幅な賃上げを期待することは難しいだろう。
したがって、仮に春闘で高い賃上げ率が実現できたとしても、それが日本の状況を大きく変えるとは考えにくい。
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