郷ひろみ、時代に「必死にしがみついてきた」境地 変わらないでいるから、変わり者と評価される
──2022年にデビュー50周年を迎え、記念のベスト盤も発表されました。この50年はどんな時間でしたか?
郷さん(以下敬称略):あっという間という気はしますが、30年、40年とは明らかに異なる重みを感じますね。50年、真面目にコツコツと音楽と向き合ってきた結果、ここまでたどり着けたのかなって。デビュー当初は何もわからない状況でしたが、徐々に経験を積むなかで感じたことは、日々努力を重ねていくことの大切さ。
また、(最新シングル)「ジャンケンポンGO!!」もそうでしたが、完成して「ああすればよかった」と感じる部分がある。そう思えることが、自分が進化し続けている証拠なのではと。過去を振り返ることよりも、そこに満足しない意識をもち続ける──つねに自分に否定的で「もっとできる、よくしていける」、そういう思いが前を向いていられる秘訣なのではないかと思います。
頂上の景色を満喫したりはしない
──自分で自分を褒めることはないのですか?
郷:人から褒めていただけることはありがたい。でも、よい部分は追求しなくていい、よくない部分を伸ばしていくというか。失敗した部分をどうリカバーしていけばいいのか、そういうところへつねに目が向いています。
1つの山を登っても、それまでの道のりを振り返ったり、頂上の景色を満喫したりはしない。登りきった段階で、次の山に向かって坂を降りていく。その繰り返しが、僕の人生なのかなって思います。
──郷さんは、つねに新しいものにアンテナを張り巡らせているという話を聞きます。
郷:新しいものだからといって、なんでも取り入れるわけではないですよ。次に何をするべきかを考えると、自然に必要なものが見えてきて、それを試みているだけです。自分は、できにくいことに挑戦したいタイプ。
──できにくいと言えば、50代のときに利き手を右から左に変更されたそうですね?
郷:(笑)。ずいぶん長い間、右手しか使っていないことに気づき、バランスを取ろうと思って、箸を使うときや歯磨きなど、日常的に行うことを変えてみました。