なぜ今?菅前首相、沈黙破り「岸田批判」始めた内幕 政権危機で加速する自民党実力者の主導権争い

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記事の中で菅氏は「岸田総理はいまだに派閥の会長を続け、(それが)派閥政治を引きずっているとのメッセージになり、国民の見る目は厳しくなる」などと痛烈な批判を展開。その内容は9日にネット上で先行公開され、岸田首相の年明け首脳外交のスタートとも重なったことで、政界関係者の間でさまざまな臆測が飛び交う事態ともなった。

そもそも「岸田首相と菅氏は長期にわたった安倍・菅政権時代から折り合いが悪く、反目し合う関係だった」(自民幹部)のは、政界では周知の事実。しかも、菅氏を退陣に追い込んだのが岸田首相だっただけに、その後の政局でも節目ごとに両氏のあつれきがうわさされる場面が続いた。

しかし、菅氏はかたくなに沈黙を守り、岸田首相も重要な政策決定などでは自ら菅氏を訪ねて意見を聞くなど、表向きは「持ちつ持たれつの関係」を装ってきた。それだけに、今回、菅氏自らが「岸田首相の政治姿勢を槍玉にあげて苦言を呈した」(側近)ことで、政界では「すわ、菅氏の岸田降ろしが始まった」(閣僚経験者)と受け取る向きが多かった。

岸田首相が派閥会長を続投した理由

菅氏は1996年の衆院選初当選で中央政界にデビューして以来、一貫して「世襲や派閥政治の弊害と党改革の必要性」を訴え続けてきた。これも踏まえて菅氏は、岸田派会長としてしばしば派閥会合に出席し続ける首相を批判した。

確かに、ここ四半世紀での自民党首相(総裁)は、首相就任時に派閥を離脱するのが「慣例」(自民長老)となっていた。岸田首相についても、政権発足時に周辺で「派閥離脱の是非」が話し合われたが、岸田首相は「麻生さん(副総裁)は首相時代も派閥会長だった」ことを理由に、岸田派会長の続投を選択したといわれる。

ただ、その時点では岸田首相の派閥離脱問題は大きな話題とはならず、派閥総会への出席に目くじらを立てる向きも少なかった。だからこそ、今回菅氏が、正面切って岸田首相の対応を批判したことが、大きな波紋を投じる結果となった。

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