日本の観光地「陳腐化・老朽化」が止まらぬ4大原因 インバウンド復活も「まったく安心できない」訳

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阻害要因1:現状維持バイアス

現状維持バイアスとは、変化や未知のものを避けて現状維持を望む心理作用のことです。

日本人全般に強い気もしますが、観光業をはじめとした地方のビジネスには、顕著にこの傾向が強いように感じています。「これまでこういうやり方だったから、それが正しい」「新しいことをやってもうまくいくかわからない」。こんな声をよく聞きます。

何もしなくても市場が成長しているような時期であれば現状維持もいいのでしょうが、そうした時代は30年近く前に過ぎ去ってしまっています。

どうせこのまま同じことをやり続ければ、苦しくなるのは見えています。であれば、「これまでの延長ではだめになる」認識を地域全体で共有し、「いくつか失敗もあるかもしれないが、何かうまく残ればいいので、とりあえず始めてみよう」というマインドセットを持つほうが、生き残れる確率は高いのです。

「計画だけ」「宣伝だけ」で実行が伴わない

阻害要因2:「計画づくり」にすべてのパワーを注ぎ込む

地方に来て行政と一緒に仕事をさせていただくようになって、びっくりしたことがあります。それが、各自治体がつくらないといけない計画の多さと、それぞれがやたらと重複していること、そして計画を立てるために費やされているリソース(人的、資金的な面での経営資源)の大きさです。

それでも、この計画にのっとって事業がうまくいっていればいいのですが、残念ながら最終的に立てられる計画は非常に内容が薄く、フォローアップもとても弱いのです。

結局のところ、計画をどれだけ綿密に立てても、観光業はうまくいきません。大切なのは「どれだけコンテンツを素早くつくり、そこへの反応を見ながら、どれだけ矢継ぎ早に次の手を打てるか」です。

そういう意味でも、計画づくりに地域のリソースの多くが割かれてしまう現状は非常に危険だと感じています。

阻害要因3:「マーケティング=広告宣伝」という誤解

本来、マーケティングとは「どのような価値を提供すればターゲット市場のニーズを満たせるかを探り、その価値を生みだし、顧客にとどけ、そこから利益を上げること」と定義されています(フィリップ・コトラー)。なかでも「ターゲット層に対して価値を生み出すこと(=しっかりしたコンテンツをつくること)」が、本来はもっとも大事なことだと私は理解しています。

しかし、残念ながら観光業において「マーケティング」という言葉は、ほぼ「広告宣伝」と同義に扱われているように感じます。

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