マスコミは、なぜ本田の批判をできないのか セルジオ越後に聞く「日本サッカーの問題点」

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じゃあ、なぜ、日本のマスコミは本田を批判しないのか。それは、「本田でもう少し稼げる」と思っているからでしょう。だから、本田や彼の事務所にヘソを曲げられると困るわけです。でも、それは、スポーツジャーナリズムではないですよ。

――ヨーロッパでプレーしている間は露出が増え、国内に戻ってくると報じられなくなるという傾向はたしかにあります。

極端なんですよ。勝っているうちはちやほやしておいて、負けるとサッといなくなるのも日本のマスコミの特徴です。スポーツをすぐに金儲けの道具にして、旨みがなくなったら見向きもしなくなる。「そのスポーツが世界で勝てるようになってほしい」、という気持ちがまったく感じられません。

だから僕は、今年ワールドカップに出場するなでしこジャパンが心配です。4年前、彼女たちが優勝したことで、マスコミはあれだけお金儲けをしたのに、今年、優勝を逃したら、女子サッカーはブームとして、報道の量も極端に少なくされてしまうんじゃないかと心配なんです。そういう意味では、テニスの錦織圭の報道にもブームの匂いを感じます。

一人ひとりのファンが、日本のサッカーを変えられる

――セルジオさんは、一貫して辛口の批評を繰り返されています。

でも、僕としては提言しているだけで、批判しているつもりはないんですよ。僕が提言することで、それを読んだ人たちが興味を持ち、それぞれが問題意識を持って、日本のサッカー界が少しでも良い方向へと進んでいく。それが大事なことだと思います。

僕は『サッカーダイジェスト』という専門誌でコラムを1000回以上続けていますが、これまでに「セルジオさんが危惧されていたことが現実になりましたね」と言われたことが何百回もあります。

当然だけど、まったく嬉しくありません。日本サッカーがそうなって欲しくないから提言し続けてきたのに、「現実になった」ということは、悪い方向に進んでしまったということですから。

最近、自分は「軍事評論家」みたいだなって思うんですよ。良くない事が起きた時にだけ、「セルジオを呼べー」って番組に招かれますから(笑)。

サッカーファンの人たちから「セルジオさん、もっと言って」とも言われます。でも、この時代だから、ブログ、ツイッター、フェイスブックなど、いろいろあって、「そう言ってくれるあなたも発信していけるでしょう」、と僕は思います。

ただ、マスコミの責任について話してきましたけど、そういうマスコミに誰がしたのかと言うと、国民なんです。マスコミというのは、国民を映す鏡であって、結局、マスコミは国民が求める記事を書き、国民はそのマスコミを見たり、読んだりして、メディアは大きくなったわけです。

そういう意味では、日本のスポーツ報道がいつまで経っても幼いのは、日本に本当のスポーツ文化がないからでもあると思いますよ。(第3回に続く)

飯尾 篤史 スポーツライター

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いいお あつし / Atsushi Iio

東京都出身。明治大学卒業後、サッカー専門誌の編集記者を経て2012年からフリーランスに転身、スポーツライターとして活躍中。『Number』『サッカーダイジェスト』『サッカーマガジン』などの各誌に執筆。著書に『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成に岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(ベスト新書)などがある。

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