食料危機や健康不安「土が解決する」決定的理由 「日本の土」が持つ"とてつもないポテンシャル"

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――それは興味深い事例です。

「食べたものが私たちになる」という言葉は、本当だと改めて実感しました。肥沃な土壌で育った野菜を食べている菌ちゃん先生はとっても生命力が強くて、話しているだけで元気をもらえるんですよ!(笑)。私たちは皆、微生物に生かされているんですね。

今回「土壌の持つ力」の取材は、胸が熱くなる瞬間の連続でした。中でも、立正大学地球環境科学部の横山和成特任教授に、「世界の土の肥沃度の比較でトップの記録を叩き出しているのが日本の土」だというデータを見せてもらったときは、本当に感激しました。単位面積で農薬使用量が多い国でありながら、日本には、とてつもないポテンシャルを秘めている土壌が、まだまだ足元にたくさんあるんです。

〈「土」が変われば、日本はきっと元気になる〉、そんな希望が湧いてきました。

「何を食べるか」ではなく「どう食べるか」

虫にも鳥にも草木にも価値を認めてきた日本人の自然観において、かつて昭和天皇がおっしゃったように「雑草という草はなく」、福岡正信氏の提唱した「足し算ではなく引き算を軸に自然に委ねる」知恵は、近代化の大波の中でも決して消えずに引き継がれてきました。人間の都合で人工的に操作するのではなく、自然を尊び、その力を借りることで、食べ物として命を頂戴するという叡智が、日本人の精神の根底にはずっとあったのです。

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土壌微生物を減少させて土を弱らせるのは、いろんなタイプの子がいるクラスを、学校が無理やり同一にしようとするようなもの。一見管理しやすいようで、個性を殺してしまうので一人ひとりの子の持つ力は出せなくなり、弱くなってしまいます。さまざまな微生物がいる土壌が病気や災害に強いと知ったとき、多様性に満ちていた母校の教室を思い出しました。 

社会だって、みんながそれぞれの居場所からささやかな力を発揮できる共生型のほうが有事に強いですよね。土壌と腸は同じ、「教育」も同じだと思いました。

だから、これから大切なのは「何を食べるか」ではなく「どう食べるか」。それによって私たちの価値観はつくられ、それが文化になり、社会全体の方向性を作り、文明そのものになっていくからです。

「食料危機」に「気候変動」などの不安が煽られる今、テクノロジーで新しいタンパク質をつくり解決する、という狭い方法論ではなく、生きとし生けるものの循環と文明史的スケールで「食」を捉え直すと、日本が持つ、目に見えない宝の山がはっきり見えてくるでしょう。大切なものを守るのは今しかありません。世界が模索する道への大きなヒントは、私たちの足元にあるのです。

堤 未果 国際ジャーナリスト

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つつみ みか / Mika Tsutsumi

ニューヨーク州立大学国際関係論学科卒業、ニューヨーク市立大学大学院国際関係論学科卒業。国連、アムネスティインターナショナルNY支局員、米国野村証券を経て現職。日米を行き来しながら取材、講演、メディア出演を続ける。著書に「報道が教えてくれないアメリカ弱者革命」「ルポ・貧困大国アメリカ」(3部作)「沈みゆく大国アメリカ」(2部作)「政府はもう嘘をつけない」(2部作)「アメリカから〈自由〉が消える」「核大国ニッポン」など多数

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