アメリカ賃上げ策は「ライバル企業への転職促進」 「競業避止義務」が賃金と生産性を蝕んでいる

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ジョー・バイデン大統領は5日、FTCの規制案を歓迎。競業避止義務は「人々の賃金を下げるためだけにつくられている」規定だと語った。

FTCは今後60日間にわたり規則案に対する意見を一般から募り、その後、最終版の作成に進む予定だ。FTCの文書によると、同規則は最終版の公表から180日後に施行されることになっているが、専門家たちは法的な問題に直面する可能性があると述べている。

競業避止義務を禁じた州では賃金が上昇

この規則が導入されれば、アメリカ全体で賃金が年間3000億ドル(約40兆円)近く増加する可能性があるとFTCは試算する。競業避止義務を研究するメリーランド大学の経済学者エヴァン・スター氏によれば、同義務が排除された後の賃上げ試算としては妥当な数字だ。

競業避止義務についてスター氏は、直接対象になっている労働者とそれ以外の労働者の双方の賃金を低下させているように思われると話した。競業避止義務があるせいで、雇用主は採用可能な人材とそうでない人材を見極めるのに時間を費やさねばならず、人材採用プロセスにかかわるコストが増大しているという。

スター氏が引用した調査報告によると、賃金は競業避止義務を制限している州の方が、そうでない州よりも高い傾向にある。ハワイ州ではテクノロジー系の新規雇用者に対する競業避止義務の適用が禁止されると、同雇用者の賃金が約4%上昇したという研究がある。

オレゴン州では2008年以降、低賃金労働者に対して新たに競業避止義務を課すことができなくなったが、こうした制度変更により時間給労働者の賃金が2〜3%押し上げられたもようだ。

競業避止義務は高給で高学歴の労働者に課されることが多いとされるが、これまで多くの企業が低賃金の時間給労働者、果てはインターンにさえも、この義務を課してきた。

約半数の州では競業避止義務の適用が大幅に制限されており、カリフォルニア州のように同義務の適用を法的にほとんど認めていない州も少数ながら存在する。

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