アメリカ賃上げ策は「ライバル企業への転職促進」 「競業避止義務」が賃金と生産性を蝕んでいる
前出のスター氏は、競業避止義務は実際に従業員訓練への投資を促進するとみられるものの、大部分の従業員が自らの意思で同義務の契約を結んでいるという主張や、同義務の締結に関して賃金交渉が可能だという主張を裏付ける証拠はほとんどないと話す。
ある調査によると、競業避止義務契約に署名する代わりに雇用者から譲歩を引き出そうとした労働者はわずか10%。3人に1人は、採用の申し出を受け入れた後に初めて競業避止義務の存在を知ったという。
法的な意義申し立ての対象になりやすい
カーン氏は4日に行われたリモート記者会見で、FTCには競業避止義務を禁止する規則を発する明確な権限があるとの考えを示し、FTCには連邦法によって「不公平な競争方法」を禁じる権限が与えられていると指摘した。
ただ、法律事務所ギブソン・ダン・アンド・クラッチャーのパートナーで、司法省の反トラスト部門で高官を務めたこともあるクリステン・リマルジ氏は、こうした規則は法的な異議申し立ての対象になりやすいとの考えを示している。
リマルジ氏によれば、規則に反対する人々は、関連する連邦法が曖昧すぎて、FTCが競業避止義務を禁止する規則の策定を進める指針にはならないと主張する公算が大きい。また、競業避止義務の影響に関してFTCが持っている証拠はまだ限られており、規則の正当性を支持するには不十分という理由で反対される可能性も高いという。
(執筆:Noam Scheiber記者)
(C)2022 The New York Times
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