ソニー・ホンダ新EV「世界と戦える」と期待できる訳 プレゼンから見えてきたモビリティー戦略

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ソニーの50分のプレゼンテーションの中でエピック・ゲームズのリブレリ氏登壇の際にさらりとスクリーンに映し出された、きわめて興味深いシーンが印象に残りました。それは無数の乗用車が走る高速道路の映像をAIの眼が捉え直した画像でした。

実はモビリティーの未来の重要ファクターは、物流と人流の生産性向上にあります。道路というインフラの上にのるのがモビリティーなのであり、そのインフラの最適化に関しては進化の余地が多大にあります。わかりやすくいえば、旧世代の信号機がコントロールする交通網はタイムパフォーマンス、つまりタイパが悪いのです。

都市交通網のコントロールにアプローチできる

中国ではアリババがこのような都市交通網をAIでコントロールする社会実験を始めていますが、まだ西側の先進国ではこのあたり、誰がやるのかについてもどのようにやるのかについても話はあまり進んでいません。

動画映像から感じたことは、ソニー・ホンダのセンサー技術とエピック・ゲームズのタッグなら、違った形でアリババのように都市交通網のコントロールにアプローチできるということです。

都市交通網の最適化コントロールに関していえば、旧来のアプローチでは都市中に無数の監視カメラをおくことで、交通の状況を把握する必要がありました。ところが、ソニー・ホンダのクルマのように45ものカメラやセンサーが実装されたクルマがクラウドに5Gでつながるようになると、リアルタイムでのクルマの位置に加え、そのクルマから見える無数のクルマや通行する自転車や歩行者などを3Dマッピングすることが可能になります。

つまりコネクテッドカーからの情報だけで、例えば東京の交通網のリアルタイムの状況をクラウド上に再現できるようになるのです。当然のことですが、それをAIが学習すれば、東京の交通網を最適化するためにどうしたらいいのか、ソリューションが生まれるようになります。

ソニーが誇る45個のセンサーと、商用で最高速レベルのSnapdragonを搭載したクルマが発売されるとだけ考えれば、EVの未来の話ですが、それが数万台規模でクラウドにつながるようになると、モビリティー社会の進化の話になる。そんなことを感じさせるプレゼンテーションでした。ソニー・ホンダからは目が離せそうにありません。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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